東京五輪の新種目スポーツクライミング。W杯王者のいる日本は強豪国か (3ページ目)

  • 津金一郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「すごく悔しくて。もう絶対にゴール取りで落ちないと決めて、何度も、何度も動画を見直しました」

 自らの登りを見直し、研究したことで、加須大会の1週間後に行なわれた第3戦で大輪を咲かせた。

 杉本は楢崎の強さを、「ダイナミックな動きが持ち味で、デッドが抜群にうまい。他の選手よりも智亜は足の筋力が強いこともあって、デッドのときに手をピンポイントに置けるのが特長ですね」と分析する。デッドとは、身体を壁に大きく引きつけた勢いを利用し、一瞬の無重力状態を生み出して次のホールド(突起物)を掴む動きのこと。ただし、デッドは身体のバランスを崩しながらの動きのため、出した手がホールドを取り損ねると、たちまち落下を招く。

 こうしたムーブ(※)には瞬発力や神経系の発達が欠かせないが、楢崎は子どものころに体操競技をやっていたアドバンテージに加え、昨年末からパーソナル・フィジカルトレーナーの千葉啓史(ひろし)氏に、クライミングで必要な細かな身体の使い方を意識下に置くトレーニングを受けて、動きの精度や質を磨いた。

※ムーブ=登るための動き方のこと。課題のなかにあるホールドを両手両足のどれで、どう使いながら登るのかを想定する。

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