東京五輪の新種目スポーツクライミング。
W杯王者のいる日本は強豪国か
「やりすぎなんですよ」
杉本怜(すぎもと・れい)が笑顔でそう振り返るのは、今年8月まで行なわれたIFSC(International Federation of Sport Climbing)ボルダリング・ワールドカップで見せた、日本男子勢の戦いぶりについてだ。
日本人男子初のボルダリングW杯王者となった楢崎智亜 杉本はボルダリング男子代表を牽引するエースだが、今季のW杯第3戦以後は、故障の治療に専念するために戦線を離脱。すると、エース不在の間に後輩たちが、ボルダリングW杯の勢力図を一気に塗り替える活躍を見せたのだ。
2020年東京五輪での実施が決定したスポーツクライミングは、「ボルダリング」「リード」「スピード」の3種目がある。毎年、種目ごとに世界各地を転戦するW杯が行なわれ、各国代表のスポーツクライマーが各大会の優勝と、各大会の成績に応じて得られるポイントの累計で決まる年間王者を目指し、腕を競い合っている。
これまでスポーツクライミングといえば、ボルダリングW杯で年間王者に4度輝いた野口啓代(のぐち・あきよ)がクローズアップされてきた。男子もボルダリングW杯で堀創(ほり・つくる)が2011年カナダ・キャンモア大会、杉本が2013年ドイツ・ミュンヘン大会で優勝するなど、決してレベルが低いわけではなかったが、W杯の毎大会に6名で争う決勝戦まで駒を進める野口の活躍と比べると、脇に追いやられるのも仕方のないことだった。
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