2016.07.27

奇襲作戦、自転車大破、流血。
C・フルーム執念の「ツール2連覇」

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by AFLO

 自転車が壊れたら、脚で走ってもゴールを目指す。濡れた路面の下りコーナーで落車したら、破けたマイヨ・ジョーヌに血がにじんでいても、チームメイトの自転車に乗り換えてゴールする――。記録の上では、チーム・スカイのクリス・フルーム(イギリス)が圧勝で2年連続3度目の総合優勝を飾ったが、精神状態は極限まで追い詰められていた。ライバルとの決定的な違いは、その勝利への執念だ。

2年連続3度目の総合優勝を果たしたクリス・フルーム 103回大会となる世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」。7月2日に世界遺産のモン・サン=ミッシェルをスタートし、今年もピレネーやアルプスの難関を越えてパリを目指した。優勝争いは例年、過酷な山岳コースの上り坂で雌雄を決するのだが、今年、フルームが勝負を仕掛けたのはそこではなかった。

 ピレネーの第8ステージ。有力選手の戦いは、ステージ最後の山岳でも膠着状態だった。フルームは残り15.5km地点、峠の頂上を越えたところで単独アタックする。下り坂に突入すると、フルームは一気に加速して高速ダウンヒルを開始。これにはライバルも意表を突かれ、一気に差が開いてしまう。

 この奇襲により、第1ステージで落車して調子が上がらないティンコフのアルベルト・コンタドール(スペイン)は引き離され、ゴールまでに大差をつけられた。母国スペインでの区間を目前にして、コンタドールは総合優勝争いから脱落。その後、ケガの影響で途中リタイアを決意する。