ありえない事態に記者ぼう然。ツール・ド・フランスに「走る」激震

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki
  • photo by AFLO

 103回大会となる世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」がいよいよ大詰めを迎えている。7月2日に世界遺産モン・サン=ミッシェルをスタートしたレースは、さまざまな波乱のアクシデントもあって、最終日となる7月24日のパリ凱旋まで目が離せない。

自転車を置いてゴールに向かって走り出したクリス・フルーム自転車を置いてゴールに向かって走り出したクリス・フルーム 2年連続3度目の総合優勝を狙うチーム・スカイのクリス・フルーム(イギリス)は、欧州を代表する山脈・ピレネーの第8ステージで優勝すると、個人総合の首位に立った。これによりフルームは、個人総合1位の称号である黄色いリーダージャージ「マイヨ・ジョーヌ」を着用。その後も安定したレース展開を見せ、このまま終盤に突入するかと思われた。だが、その前にとんでもないハプニングが起きた。

 それは、フランス革命記念日である7月14日の第12ステージ。舞台は「悪魔の棲む山」として今大会の重要区間とされた「モン・ヴァントゥ」だった。この日はアルプスから地中海に吹き下ろす台風並みの季節風「ミストラル」が吹き荒れることが予想され、レース前日にゴールを予定されていた頂上から、6km手前の地点へ移すことが発表されていた。実はそれが、波乱の原因となった。

 7月14日は祝日であり、勝負どころの山岳ステージ。 距離短縮に伴って、ゴール手前のコース脇には観衆が集中してあふれ返っていた。フルームは総合優勝を争うライバル選手を置き去りにしてゴールを目指していたのだが、観客に前方をふさがれて急停車したカメラバイクとコース上で激突。フルームの自転車は、壊れて使いものにならなくなった。それで、フルームはどうしたのか? 壊れた自転車を置いて、ランニングでゴールに向けて走り出したのだ。

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