2015.10.12

東京五輪から51年。ガンと闘う「名花」ベラ・チャスラフスカ

  • 長田渚左●文 text&photo by Osada Nagisa

 昨年、『桜色の魂~チャスラフスカはなぜ日本人を50年も愛したのか~』を上梓することができた。

 取材は24年にも及んだが、ベラ・チャスラフスカさんが1964年東京五輪の体操女子個人総合で金メダルを獲得したのは半世紀も前のことで、近年の出版不況で本にするのは無理だろうとほとんど諦めていた。ところが敬愛する同業者の木村元彦氏の粘り強い叱咤激励を得て、何とか1冊にして世に出すことが叶った。おかげさまで日本経済新聞や朝日新聞で、2014年のノンフィクション部門のベスト3に選んでくださった人もいて、つくづく出版できて良かったと思った。

 年が明けた2015年3月、そのチャスラフスカさんから少し不思議なメールが届いた。

ベラ・チャスラフスカ 1942年、チェコスロバキア(現チェコ)生まれの体操選手。東京五輪(64年)では3種目、メキシコ五輪(68年)では4種目で金メダルを獲得。その優美な演技は「オリンピックの名花」と称えられた「あなたが書いたすばらしい本に充分に感謝の気持ちを伝えていなかったことをお詫びします。私の日本人の友人にとっても、とてもすばらしい本であることをお伝えいたします。オサダ様どうぞお元気で」

 私はこのメッセージを読んで、彼女があらためて何かを伝えようとしているようで少し胸騒ぎを覚えた。ほどなくして、チャスラフスカさんが膵臓ガンを患い、手術することになったという一報が入ってきた。