全日本体操8連覇の内村航平。孤独な王者が待ち望んでいるもの (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Nakamura Hiroyuki

「去年の世界選手権の団体戦を経験して、技の難度をある程度落としても90点は取れるという自信がついていたので、今日はあの団体戦を思い出しながらやりました。2日間を通じで大きなミスはなかったから、今シーズンへ向けてはいい流れを作れたと思いますが、今日は着地を止められなかった。せめて最後の鉄棒くらいは止めたかったです」

 また内村は、「国内大会は気持ちの入れ方が難しいですが、年をとると今回のような戦い方もやらなければいけないと思う」と話すように、戦い方の幅が広がってきているといえる。

 内村が8連覇している全日本選手権の過去の成績を振り返ると、2位と僅差の戦いだったのは08年と09年ぐらいで、それ以降は他を圧倒しての優勝だった。つまり、近年は国内にライバルがいない状態。王者ゆえの孤独を感じながらも、彼はリオ五輪へ向けて自分との戦いを続けようとしている。

 絶対王者・内村が目指すのは、来年のリオ五輪での金メダルだ。また、個人総合だけでなく、団体でも優勝するためには、日本選手全員のレベルアップが必要になる。そのためにも、内村が待ち望んでいるのは自分のライバルとなる若手のさらなる成長だろう。

「全日本選手権はシーズン最初の大会で、毎年若い選手の成長を見られて刺激をもらえる」と内村が話していたように、今年の決勝の第1班(予選上位)は内村と田中以外は大学生が占め、若い世代が育ってきている。

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