バドミントン男子を襲った「世界一」ゆえの試練 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 そしてファイナルゲームも、「相手がペースを変えてきた時に考えすぎてしまった」と、中盤から圧倒されて12対21でゲームを奪われてしまい敗退。「注目された中で試合をするのは価値があることだし嬉しいことだと思っていたけど、逆に勝ちたいとか、勝たなければいけないという感情が出てきて、いつも以上に力が入ってしまった」と反省する。

 さらに翌日は、シングルスの佐々木がランキング5位のトミー・スギアルト(インドネシア)に、上田拓馬(日本ユニシス)が16位のフー・ユン(香港)にストレート負け。ダブルスの嘉村健士/園田啓悟(トナミ運輸)も、ランキング1位のモハマド・アッサン/ヘンドラ・セティアワン(インドネシア)から第1ゲームを先取しながら、最後は力でねじ伏せられ、上位の壁を崩せずに終わった。

 そんな中、重圧を感じながらも着実に結果を残したのがエースの田児だった。

「正直言えば、1回戦からいっぱいいっぱいでした」と苦笑するが、1回戦では韓国の李東根を相手に第1ゲームを簡単に取って、第2ゲームは落としたが、「集中力に問題もあったが、そのなかでうまく切り換えられて。これが思い入れのあるジャパンオープンでなかったらズルズル行ったかもしれない」と言うように、ファイナルは序盤から圧倒して21対8で勝利した。

 2回戦は格下のソウラブ・ヴァルマ(インドネシア)を圧倒すると、3回戦ではランキング12位のハンス・K・ヴィティンフス(デンマーク)に第2ゲームを奪われながらも「いいところも悪いところも出てしまった。苦しい場面はいっぱいあったが、負けないという気持ちは強かった。今まで調子が良くなくても勝てるようにとやってきたが、今日はそれを出せたと思う」と、安定感のあるプレーで準決勝進出を決めたのだ。

 だがその準決勝は世界ランキング1位のリー・チョンウェイ(マレーシア)との対戦。前日の3回戦までとはまったく違う気迫を見せるプレーをしてくる相手に、一度もリードすら奪えずストレート負けという結果に。

「予想以上にお客さんも入ったからもっと長く試合をしていたかったけど......。彼にしっかり準備をされて気合を入れてこられると、まだ太刀打ちできない。トップ選手は準決勝からギアを入れ換えてくる感じだから、自分もそうならなくてはいけない」と完敗を受け入れた。

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