【レスリング】吉田沙保里&伊調馨。新階級で見えた一抹の不安

  • 宮崎俊哉●構成・文 text by Miyazaki Toshiya photo by AFLO

 2013年2月、国際オリンピック委員会(IOC)は、2020年五輪で実施する中核競技からレスリングを外すと決定。古代オリンピック競技であり、近代オリンピックでは第1回大会から続く伝統ある競技ながら、オリンピックから除外される危機に直面したレスリングは、ネナド・ラロビッチ新会長のもと組織改革を断行した。さらに、延長戦で攻撃権を選択するボールピックアップなど分かりにくいルールを変えるとともに、各階級も変更。すべての競技において男女平等を目指すIOCの意向に沿って、女子の階級を4から6へ増やしたことは、オリンピックに存続できた大きな要因だろう。

新階級で挑んだ吉田沙保里は、危なげない試合で全日本選抜を制した新階級で挑んだ吉田沙保里は、危なげない試合で全日本選抜を制した 2016年リオデジャネイロ・オリンピックは、男子フリースタイル、男子グレコローマンスタイル、女子スタイルそれぞれ6階級で実施される。それを受けて、6月14日~15日に東京・国立代々木競技場第2体育館で開催された全日本選抜選手権は、国内で初めて新階級で行なわれた。

 オリンピック3連覇の偉業を達成し、2年後のリオでは4連覇に挑む吉田沙保里、伊調馨が出場する女子スタイルの新階級は、48キロ級、53キロ級、55キロ級、58キロ級、60キロ級、63キロ級、69キロ級、75キロ級の8階級。世界選手権、大陸選手権、ワールドカップなどはこの8階級で行なわれるが、オリンピックでは55キロ級と60キロ級をのぞく6階級となる。

 新階級にあわせて、吉田はそれまでの55キロ級から53キロ級に、伊調は63キロ級から58キロ級に変更した。レスリングに限らず、体重によって階級が分けられる競技では、ベテランとなればアップすることはあっても、ダウンすることは通常ありえない。だが、ふたりの女王はあえて下の階級を選択した。

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