【スピードスケート】メダル21個と0個。オランダと日本は何が違っていたのか? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 ただし、これは予想外の結果ではなかった。男子500mは強豪がひしめき合う状況で、加藤と長島が金メダル候補であることは確かだったが、同時に、5位、6位になってもおかしくないとも考えられていた。また、女子500mは、優勝した李相花(イ・サンファ/韓国)が抜け出ていた以外、銀メダルと銅メダルを6人ほどで争う状況で、小平にもメダルの可能性は十分あったが、結局ライバルたちの後塵を拝することになった。

メダルを期待された加藤条治も500mで5位に終わったメダルを期待された加藤条治も500mで5位に終わった そうしたなか、最大の驚きは、優勝したオランダ選手たちの記録の伸びだった。特に男子500mは海抜0mの低地リンクにもかかわらず、標高1200m強のソルトレークシティー(カナダ)で出た五輪記録の34秒42に迫る、34秒49というタイムが出ていたことだ。
※高地のリンクは気圧が低いため空気抵抗が少なくなり、タイムが速くなる

 ソチでは、加藤は2本目に34秒77を出した。この記録は、長野のエムウエーブ(標高300m)で加藤が出した国内最高記録の34秒64と比較して、標高差を考慮に入れると、いい記録といえる。しかし、オランダ勢はその上をいっていた。

 また今回不振だったのは日本だけではなく、バンクーバーで金1、銀2、銅1を獲っていたアメリカもメダル0であり、金2、銀1、銅1だったカナダもまた、銀1、銅1とメダル数を減らしている。

 これまでは高地の高速リンクで技術を磨く練習方法が世界の主流だったが、今回、オランダのほかヨーロッパ勢は、海抜0mの低速リンクでいかに記録を伸ばすかに取り組んできたのだ。まさにソチ対策の成果ともいえる。

 女子パシュートを終え、日本チームの石幡忠雄監督は「今のままではダメだということをハッキリ感じた」と話した。オランダもかつてはナショナルチームが軸になっていたが、今はクラブチームごとに強化をするようになり、激しい競争状態を作りあげ、そのうえでナショナルチームがある状況だという。

 日本の場合、チームとして機能する実業団チームはまだ少なく、オランダのような競争状態を作り上げるのは困難だ。また、バンクーバー五輪前にショートトラックがナショナルチームのヘッドコーチに韓国人コーチを招聘した例はあるものの、一般的に外国人コーチを招聘することに消極的だ。経済的に難しい部分もあるだろうが、そんなところにも世界から遅れる要因があったといえる。

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