【月刊・白鵬】横綱が涙した、ソチ五輪の「名シーン」
第35回:感動のソチ五輪
ソチ五輪では日本の選手たちの活躍に酔いしれたという白鵬関。「五輪好き」の横綱はソチ五輪が始まると、
連日、テレビの前に釘づけだったらしい。
そして今回も、選手たちの奮闘する姿を見て、
たくさんの力をもらったという。
ソチ五輪が閉幕しました。大会期間中は、スポーツをやっている者として、またひとりの人間としても、心が揺さぶられる毎日でした。
私の父がモンゴル人初の五輪メダリストだったこともあって、幼い頃から五輪というモノに対しては、特別な思い入れがあります。それだけに、今回のソチ五輪もとても楽しみにしていました。
なかでも注目していたのは、今回から新たな競技種目となった女子ジャンプの髙梨沙羅選手、5回目の五輪出場となるモーグルの上村愛子選手、そしてフィギュアスケートの浅田真央選手と村上佳菜子選手でした。
そのうち、身につまされる思いで見ていたのは、髙梨選手でした。
ちょうど同じ日、スノーボードのハーフパイプでは、15歳の平野歩夢選手が銀メダル、18歳の平岡卓選手が銅メダルを獲得。日本の若い力が爆発したこともあって、17歳の髙梨選手にもかなりの期待が高まっていました。まして、髙梨選手はワールドカップで連戦連勝。「金メダル間違いなし」と思って見ていたファンの方も多かったと思います。
しかし、結果はまさかの4位でした。五輪の"怖さ"というのか、やはりワールドカップとは違う「何か」が五輪にはあるんでしょうね。
率直に思ったのは、日本中から期待された17歳の髙梨選手は、心身のバランスが崩れてしまったのかな? ということでした。そして、彼女の涙をこらえる姿を見て、私は若い頃の自分を思い出しました。三役、大関へと駆け上がっていった20代前半、私は「勝ちたい」という一心で、自分を見失ってしまうことがよくありました。「ここ一番」という場面で黒星を喫してしまったり、ケガをしたりしていました。それは、周囲からの期待や、自分の地位というモノからくるプレッシャーに負けていたのです。
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