【体操】内村航平が求める「美しさ」の先にあるものとは?
個人総合でも団体でも金メダルを狙う内村航平。視線の先に見えているものとは?「個人総合の金メダルは絶対!」と早くから大きな期待を寄せられている日本体操のエース、内村航平。だが、ロンドンでの本番が近づき、周囲の期待がさらに膨らんでも、彼はそれを歓迎している。5月のNHK杯で、残りの代表4名が決定した時も、会場を埋めた観客に向かって「どんどん期待してください。倍にして返します」と、平然とした表情でアピールしていた。
そんな発言ができるのは、内村の類(たぐい)まれな強心臓にある。試合で一度も緊張したことがなく、「プレッシャーというのはわからない」と語るほど。初の国際舞台だった2007年のユニバーシアードも、「他の選手はすごくピリピリしていて、『僕もそうならなくてはいけないのか』というのを、試合が終わってから気づいた」と苦笑いしながら振り返る。
金メダルという重圧を前に、平然とした気持ちでいられるのは、「やるべきことをきちんとやってきた」という思いがあるからだろう。肩痛に苦しんだ2010年も、大会2ヵ月前に足首を捻挫した2011年も、世界選手権の個人総合では2位に大差をつけて圧勝した。内村は「北京からいろいろ経験した。ものすごく濃い内容の4年間を過ごしたのが、今の自信になっている」と胸を張る。よってロンドンでの個人総合は、昨年の世界選手権の演技構成のままで、「後は技に磨きをかけるだけ」と語る。
しかし、そんな彼が最も意識しているのは、個人総合ではなく、団体での金メダルだ。代表メンバーは、2004年アテネ五輪の団体優勝に感動した世代。それ以降は中国に敗れ続けているだけに、『体操王国ニッポン』を復活させるべく、是が非でも必要なタイトルと考えている。
そのために内村は、団体のゆかと鉄棒では、個人総合より難度の高い演技構成を用意した。技の難しさを表す演技価値点(Dスコア)を、ゆかは6.5から6.7に、鉄棒は6.9から7.2に上げた。その構成内容も「練習で6種目通してもミスがでない。Dスコアをあげても安定感は下がっていない」と、すでに完璧な状態だという。