高橋大輔「宝石って人を惑わす」切なく、狂おしく『フレンズオンアイス』で表現した不思議な世界 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【表現に対する徹底的なこだわり】

「宝石」。それが今回のショーのテーマだという。高橋は滑ることで、それを体現していたーー。

 ショー1部の山場、高橋はソロナンバー『Wake Up, You're Dreaming』で幻想的な滑りを見せている。

「宝石って人を惑わす部分も多いのかなって思うんです。その惑わせるっていうところから、不思議な世界に迷い込んでしまい、そこから抜け出せなくなってしまう。その感じを、自分自身で振り付けしました」

 高橋は、自身のソロプログラムについてそう説明している。

「曲調もきれいな感じで始まって、そんな感じで続くのかなと思いきや、ジャズっぽくも、ブルースっぽくもあって、またきれいな感じに戻る。解釈するのがとても難しい曲だなと思いました。だからこそ、不思議な雰囲気を出せるかなと。最近は他のスケーターと一緒に滑るほうが多いので、緊張感が少し高いんですけど(笑)」

 世界観の演出は、やはり傑出していた。モノトーンの衣装で、シルバーとホワイトの中間色の上着は謎の文様が施され、裾がすらりと長く、滑るたびに大きく揺れる。袖は黒く、パンツも黒く、それがコントラストで、冬の木のような寂しくも雄大な印象を与え、なびく金髪が何かのサインのようだった。

「本当は、(金髪に見える)髪の毛ももう少し白を入れたかったんですが」

 高橋は言うが、表現に対しては徹底的なこだわりがあるのだろう。色や模様や空間をどう使うか。それは服装や部屋の感じなど、日頃から考えていることで、センスが鍛錬されている。醸し出す空気は、一朝一夕ではない。

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