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宇野昌磨が引退「フィギュアスケートは性に合っていた」内向的な少年から笑顔の王者へ (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【コーチとの出会いで起きた劇的な変化】

 シーズン前半、コーチが不在だったこともあり、思うような演技に到達できず、「心からフィギュアスケートを楽しめない」という状況だった。

 2018年の平昌五輪後、「もっと強く」という焦りに駆られていた。結果、グランプリ(GP)シリーズでフランス大会8位、ロシア大会4位と見たことがない不調だった。

 しかし強烈な不振のなか、ランビエールが臨時コーチに入って、劇的な変化が起きた。

「(復活に)秘訣はいっさいありませんよ」

 全日本で優勝後、ランビエールは静かだが明瞭な口調で説明していた。

「昌磨は、(全日本のショート・フリー)2つのプログラムを楽しんで演じていました。ジャンプだけでなく、ほかの技術点の部分など、すべてがそうで。アグレッシブな姿勢で滑ってくれたことを、コーチとしてはうれしく思います。彼は"スケートを楽しめる"。たとえ厳しい練習のなかでも、楽しさを感じられるのです」

 流ちょうな英語でそう答えたランビエールは、Enjoy(楽しむ)という単語を強調し、Confidence(自信)という言葉も使いながら、こう続けていた。

「私はラッキーでした。昌磨の周りにいる人々が、コーチとして仕事をするための環境をつくってくれたのです。そのおかげで、短い時間で成果を出せました。昌磨が自信を取り戻す、楽しんで滑るためのトレーニングが十分にできるようになった。それが(優勝に至った)シンプルな真実です」

 その言葉を振り返ると、今回の引退会見で宇野が口にしていた証言と符合する。

「自分は出会う方に恵まれました。好きに伸び伸びやれるサポートをしてもらえて」

 宇野はそう言って、謙虚に感謝していた。

 それは裏を返せば、楽しむことができたら無敵、とも言える。日頃の練習から自らと対峙し、それに打ち克つことができた時、すでに誰かと争わなくてもいい。フィギュアスケーターとして高みに立っているのだ。

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