鍵山優真「今季は全部うまくいかないと思った」からの北京五輪出場へ。浮上のきっかけはコーチである父からの一言だった (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 それでも表情は落ち着いていた。鍵山はSP演技後、「4回転トーループでコケたのは悔しいけど、同じ失敗でもパンクではなく、体を思いきり締めてやりきったうえでの転倒なので。他の部分はしっかり練習どおりにまとめられたし、失敗の原因も父と話して突き止められたので、明後日のフリーには生きると思います」と笑顔で話していた。

 フリーではまた違う緊張感があった。この大会ではSP下位から順番に演技する。2人前に滑った、今季の全日本ジュニア優勝の三浦佳生はサルコウとトーループ2本の4回転ジャンプをしっかり決め、合計276.16点にしていたからだ。

 それでも鍵山にはGPシリーズを戦い抜いてきた自信はあった。スピードに乗った滑り出しから、4回転サルコウと3回転ルッツ、4回転トーループ+3回転トーループをきれいに決めた。SPでミスをした4回転トーループはむしろ、他のジャンプより余裕があった。そのあとのトリプルアクセルからの3連続ジャンプは、最後の3回転サルコウが2回転になって基礎点を下げたが、GOE(出来ばえ点)の減点はなし。後半の4回転トーループと3回転フリップ+3回転ループは安定感のあるジャンプ。最後のトリプルアクセルはステップアウトになるも結果的には、フリーは宇野を上回る2位の197.26点を出し、合計を292.41点にして総合3位になった。

「自分も(代表)候補のひとりとして周りの期待もあったので、五輪選考会という舞台にすごく緊張しました。だから終わった時はホッとして......。父にも『とにかく全力で滑りきったな』と言われて、すごく涙が出ちゃって。よかったなという思いでした」

 鍵山は演技後の涙の理由をこう説明した。

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