宇野昌磨、悔しくて楽しいと笑顔。世界選手権が無観客開催の影響を語る (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 勝負の場で楽しさと欲を同時に解き放つとき、宇野は至高のスケーティングができるのかもしれない。

「冗談ですけど」

 彼はそう前置きをしたが、たぶん、それは「たら・ればですけど」となるだろう。

「もしかしたら、皆さんの声援があったら、それが後押しになって(トリプルアクセルは)着氷できていたかもしれません。無観客は不思議な感覚での試合で。お客さんがいないから、舞い上がって緊張しすぎることもなく、(気持ちは)フラットではあるんですけど......」

 宇野は他の選手以上に、観客の熱を受け、それを増幅させ、昇華できる選手なのだろう。平常心はどのスポーツでも求められる心理状態だが、平坦であってはならない。楽しむことによって、欲が湧きだすのは自明の理で、そこに観客がいると自然な呼吸が生まれる。例えば、レベル4がついた最後のステップの輝きは他の追随を許さないもので、もし観客がいたら陶酔させていたはずだ。

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