2021.03.26

紀平梨花の視線の先に世界女王の座。フリーでの逆転には何が必要か

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihiro

 コロナ禍で昨季は大会開催直前に中止になった世界選手権が、今季はストックホルム(スウェーデン)で開催にこぎ着けた。初日は女子ショートプログラム(SP)が行なわれ、紀平梨花が合計79.08点をマークして2位発進。首位は合計81.00点のロシア女王、アンナ・シェルバコワで、紀平との点差は1.92点だった。

2位となった紀平梨花のショートプログラムの演技2位となった紀平梨花のショートプログラムの演技  初出場だった前回大会(2019年)は総合4位に終わった紀平にとって、満を持して臨む大会となった。是が非でも金メダル、初優勝を勝ち取りたいところだが、気負いは微塵も感じられなかった。それは、練習をしっかりとこなし、準備万端を整えてこの舞台に乗り込んで来たからにほかならない。

 これまで、紀平の心配事は常にスケート靴だった。武器であるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)という大技ジャンプを跳ぶためには、自分の感覚に合うスケート靴を用意して調整することが必要となる。今回は、自分好みのスケート靴を手に入れて大会にやってきたという。

「(昨年12月の)全日本選手権後に靴を変えました。左1足、右1足、それぞれに合う靴を見つけて、ものすごく跳べる靴で、トリプルアクセルも4回転サルコウも跳びにくくない靴が用意できました。(私にとって)跳ぶ感覚を掴むためには靴がすごいポイントだったので、全日本よりもアクセルが跳びやすくなっていると思います。

 4回転サルコウについても、いまの靴であればこういう風に跳べば跳べるという感覚は掴めているので、そういう感じを試合本番に持っていけるようにしたいです」

 22日の公式練習後にこう語っていた紀平。2018年のシニアデビュー以降では、初めて靴の不安がない状態で自信を持って挑める大会になったようだ。

 SPでは、ほどよい緊張感を漂わせながらも、笑顔でリンクに立った。凜とした佇まいで、しっかりと集中していた。

 重厚なリズムを刻む『ザ・ファイア・ウィズイン』の曲に乗り、冒頭のトリプルアクセルを鮮やかに成功させると、続く3回転フリップ+3回転トーループの連続ジャンプ、3回転ルッツも決め、いずれも安定感あるジャンプだった。演技後は、右手でガッツポーズも見せたほど、充実感いっぱいの表情を見せた。