2020.08.24

羽生結弦、五輪連覇への道。苦難を乗り越えて築いていく「理想のスケート」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA/Noto Sunao

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『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』 

第I部 五輪での戦い(4)

数々の快挙を達成し、男子フィギュア界を牽引する羽生結弦。その裏側には、常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱がある。世界の好敵手との歴史に残る戦いやその進化の歩みを振り返り、王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。 


2018年平昌五輪のフィギュアスケート男子シングルSPで演技する羽生結弦 羽生結弦にとって2017年から18年の平昌五輪シーズンは、徐々に勢いを加速させて頂点に駆け上がったソチ五輪シーズンと違い、苦しい戦いを強いられた。

 9月のオータムクラシックでは、ショートプログラム(SP)は世界歴代最高の112.72点を叩き出す順調なスタート。しかし、羽生が挑戦を決意していたフリーでの4回転ルッツが危機を招くことになった。グランプリ(GP)シリーズ初戦のロステレコム杯こそ、それを見事に決めて大きな手ごたえを得たが、2戦目となった11月のNHK杯で裏目に出た。

 競技前日の公式練習では、動きにキレがなく好調とは言えない状態だった。4回転ループは2回続けて転倒し、4回転サルコウもパンクを3度繰り返してからなんとか決めた。そうした中、一度パンクしてから再び挑んだ4回転ルッツは、軸が完全に斜めになり、回転不足でブレードが氷に突き刺さる形になって転倒。羽生は、そのまましばらく氷上に倒れ込んだままだった。