2019.12.26

逆境を力に変えた宇野昌磨。
「あきらめずにやってきてよかった」

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「ジャンプは全部、危なかったです。あれだけこらえるジャンプばかりっていうのはあまりない。でも、(それを)こらえられたのが、優勝の要因だと思っています」

全日本選手権で4連覇を果たした宇野昌磨 取材エリアに出てきた宇野昌磨(22歳)は、清々しい顔で言った。

 2019年の全日本フィギュアスケート選手権、宇野は4連覇を成し遂げる形で制した。ショートプログラム(SP)は2位スタートだったが、フリーは184.86点で他を引き離しての1位。逆転での戴冠だった。

「今シーズンは、"スケートをやっていてつらいな"というのが、(今までで)いちばん多くて。(今回は)久々に練習から楽しめて、試合も楽しめて。自分の演技を貫くことができました」

 宇野はそう言って、とろけるような笑顔になった。

 王者はなぜ、"こらえられた"のか?

 12月22日、国立代々木競技場第一体育館。宇野は、フリースケーティングの当日練習、曲かけでことごとくジャンプを成功させていた。ただ、ジャンプを跳んだあとのステップやスピンは割愛。ジャンプをひと通り終えると、ヒザに手をついた。体力的に相当厳しいプログラムなのだろう。

 ただ、宇野の表情は、厚い雲が切れて日が差すようだった。

「(平昌)五輪の結果で、僕が思った以上のものを受け取ってしまいました。その(結果を求める)自覚で、"強くなろう"という思いが、"楽しむ"よりも大きくなってしまって。(グランプリシリーズ)フランス大会が(完敗という形に)終わったことで、むしろ気持ちが変化して。あの(苦い)経験で、勝手に背負っていたものを下ろすことができました」

 この日、フリーの演技に臨んだ宇野は翼を授けられていた。体よりも、心が解放されていたのか。

「失敗しても引きずらない、と思って入って。(冒頭の)フリップはすごくギリギリでした。でもそこで、(転ばず)よかった、という気持ちを(無理に)隠さず、顔に出しながら」

 宇野は訥々と克明に、自らの演技を振り返る。