紀平梨花はロシア勢に勝つことを「あきらめてない」。強化ポイントは? (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「昨年(のNHK杯)もいいフリーができたけど、それ以上に今年はいいフリーの演技を見せられた。ここ最近は、ジャンプの着氷が大きなマイナスになることが少なくなってきたので、もっと加点がつくようなジャンプを跳べるようにしたい。トリプルアクセルは着氷もよくなり、集中して跳ぶことができれば安定してきたと思うので、そこは(1年前よりも)成長したと思いますし、自信になりました」

 今大会では、今後フリープログラムに組み込む予定という4回転サルコウに挑戦する可能性があった。SPで5.15点差の2位発進となった紀平が逆転を狙うには、同じトリプルアクセルジャンパーのコストルナヤが跳んでいない4回転サルコウに挑んで成功させることが一番の近道だったからだ。

 ただ、今大会の最大目標は、表彰台に上って2年連続となるGPファイナル進出を決めることだった。24日の一夜明けの会見では、舞台裏での葛藤をこう明かした。

「自分の予定ではやるつもりでした。やりたかったんですけど、冷静に考えてミスだけはしたくないと思ったので、練習不足の内容をするより、しっかり練習してきたことをするほうがノーミス演技ができると思ったので、しっかりといまの自分を見つめ直し、『やめておけ』という判断を最後の最後でしました」

 フリー直前には、濱田美栄コーチから「GPファイナルへ、堅くいこう」と、言葉を掛けられた。ミスが許されない演技をするためには4回転サルコウを跳ばないという判断を、演技の前に決めたという。

 今大会では跳ばなかったが、女子フィギュアが4回転時代に突入した以上、優勝争いをするには必要不可欠なジャンプになることは間違いないだろう。だからこそ、紀平本人も濱田コーチも、慌てずにじっくりと4回転サルコウの習得に励んでいるのだ。

「4回転サルコウを今回は入れられなかったので、もっと自信を持って安定したジャンプにして、入れていけるようにしっかり練習していきたいです」

 今季一番の厳しい戦いになると紀平自身が予想するGPファイナルでは、4回転サルコウを含め、ジャンプの完成度を高めてGOE加点の勝負に持ち込み、ミスのない完璧な演技を目指す。それしか、4回転を武器とするアンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トゥルソや、NHK杯で圧倒的な演技を見せつけられたコストルナヤに勝つ道はない。

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