苦悩するザギトワ。17歳の女王は「技術」で4回転時代を戦い抜く (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今シーズン、ザギトワは完璧な演技に近づこうとしていた。それは、同じロシアのトゥルソワやシェルバコワのように4回転を跳ぶことではないだろう。ジャッジの採点が大きく変わる中でも、スケーティング技術を最大限に高めることだった。

「今シーズンは、クリーンな滑りがしたいと思っています。難易度の高いジャンプに挑戦しながらも、ステップ、スピンの技術を高めて」

 10月のジャパンオープンが終わったあと、女王はそう言って口の端を引いて笑みを洩らしていた。

―4回転時代がやって来ているが。

 記者からの質問に、彼女は背筋を伸ばしたまま、少しも動じずに答えている。

「私は単純に、フィギュアスケートを楽しみたい。昨シーズンに比べ、いい仕上がりになってきています。技術的な問題でしょうか。昨シーズンは(成長期で体が急激に大きくなって)自分の手足が動いているときにどこにあるかわからない、という感覚で。その調整にコーチと苦しんだ時期がありました」

 女王は、静かに言った。その苦悩を、彼女はそこに再現させない。涼しい表情で、記憶を封じ込めた。世界のトップに立った人間にとって、弱さを見せることは、敗北を意味するのだ。

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