スケートカナダ圧勝の羽生結弦。ジャンプに込められていた今の心境 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今回の羽生の得点は、新ルールでは昨季の世界選手権でネイサン・チェン(アメリカ)が出した世界歴代最高の323.42点に0.83点だけ及ばない。だが羽生は「ノーミスではないので、あと3~4点はジャンプだけで上げられますし、ぜんぜん伸びしろはあると思う」と話してこう続けた。

「今回の構成でも......、世界選手権の時とは採点ルールも違っていて単純な比較はできないんですけど、久しぶりにフリーで210点を超えたのはやっぱりうれしいですね。まだショートプログラムで110点は超えてないですけど、たぶん今のルールだとフリーの220点は難しいと思うので、とりあえずはショートの110点とフリーの215点を目指してやっていきたい、という気持ちです」

 羽生は、そのあとのエキシビションでは、14年ソチ五輪SPの『パリの散歩道』を滑った。

「とくに強い意味はないけど、ちょっと懐かしいものをやっていきたいな、というのがちょっとずつよみがえってきているので。今、この4回転トーループ1本の構成のショートプログラムをやったらどのくらいできるのかな、という挑戦でもあって、楽しみにしながらそれに備えています」

 そのエキシビションでの4回転トーループとトリプルアクセルは、スピード感もキレも満点の完璧なジャンプだった。3回転ルッツからの連続ジャンプは後半が2回転になってしまったが、ステップシークエンスはキレのある滑りで、彼の気持ちを存分に表現する滑り。

 さらにフィナーレのあとのジャンプ合戦では、最初の4回転サルコウ挑戦。転倒したものの、すぐに挑戦し直して成功させると、そのあとに1オイラーを付けて、転倒はしたがさらに4回転サルコウを付ける連続ジャンプにも挑んだ。

 フリーの4回転ループを完璧に跳べなかった点で悔いは残った大会だったが、納得できる結果。そのジャンプに込められた彼の気持ちを見た瞬間だった。

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