進化する紀平梨花、体力面に自信。「フリーは初めからラクに感じる」 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 体力面でも自信をつけた紀平だが、翌日のフリーでは朝の公式練習が本番と違うリンクで、氷も変わったためにトリプルアクセルに苦戦をした。6分間練習でも積極的にジャンプを跳んでいたが、終盤には転倒してその後の2回はダブルにとどまった。

 演技直前にリンクに出てきた時も、名前をコールされる前に8本もジャンプを跳んだが、アクセルの6回はダブルとシングルだった。

「サブリンクとは氷が違っていて、アクセルの入りで少しスルッとなる感覚があったので、滑る直前の練習ではどうやったら左足を乗り込めるようにできるか、とすごく考えていました。少し後ろ寄りだった重心を前にして跳ぶことを意識しようと思ったので、本番では本当に集中していました」

 本番ではふたり前に滑ったメドベデワが、回転不足はありながらジャンプをすべて着氷し、142.29点を出す演技をしていた。そんな状況だったが、紀平にとってはトリプルアクセルに気を取られていたことが逆に幸いしたのかもしれない。自分のジャンプのみに集中して最初のトリプルアクセルを成功させると、2回転トーループを付けて連続ジャンプにした。

 次のトリプルアクセルは、軸が少し斜めになって回転不足を取られたがしっかりと着氷。そこからは複雑に変化する曲に乗ると、後半の3連続ジャンプの3回転ルッツで回転不足を取られてわずかに減点されたものの、しっかり滑り切って最後は右手を静かに挙げるガッツポーズを見せた。

 得点は145.98点。合計で224.16点となり、シーズン初戦を優勝で飾った。

 トリプルアクセルの加点は、成功した連続ジャンプがプラス0.80点と低かった。

「6分間練習と直前の練習でも、アクセルを思ったようには跳べなかったので焦ったんですけど、本番で跳べたのはすごくよかったです。これからグランプリシリーズが始まるので、もっと完璧にして、加点の付くトリプルアクセルを跳ばなければいけないし、リンクが変わった時でもきれいに跳べるようにしなければいけない、と思いました」

 そう言って気持ちを引き締める。

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