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紀平梨花は燃え尽きない向上心の塊。
4回転を「2種類跳びたい」

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 昨季の紀平梨花は、鮮烈なシニアデビューを飾り、グランプリ(GP)シリーズ2連勝、GPファイナル優勝、四大陸選手権優勝など、国際大会(個人戦)7戦6勝の大躍進を遂げた。怖いもの知らずの挑戦者として臨めたシーズンから一転、シニア2年目となる今季は、ロシア勢の4回転ジャンパーがシニアに転向するなか、追われる立場で迎えることになる。

「ドリーム・オン・アイス2019」に出演した紀平梨花「ドリーム・オン・アイス2019」に出演した紀平梨花 周囲の期待や自分自身のプライドによる重圧、そしてタイトルへの渇望や欲求との戦いも出てくるだろう。さらに、女子選手にとって身体的変化が大きく生じる大事な時期にも重なる。7月で17歳になる紀平には、今後を左右する重要なシーズンとなりそうだ。

 今年4月の世界国別対抗戦を最後にオフシーズンに入った紀平は、この2カ月間、日本や韓国でアイスショーに出演するとともに、新プログラムの振り付けをしたり、米国コロラドでの強化合宿で4回転ジャンプの習得に取り組んだりしてきたという。

「オフシーズンの前半は本当に充実した日々を送っていて、一瞬だったなと思える2カ月でした」

 いくつもの金字塔を打ち立てた昨季だが、目標に掲げた世界選手権金メダルは逃した。満足感よりも悔しさを味わったことで、燃え尽き症候群に陥ることもなく、向上心と貪欲さはまったく失っていない。だからこそ、すでにトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)という強烈な武器があるにもかかわらず、4回転ジャンプという大技の習得に励んでいるのだ。「いずれはトーループとサルコウの2種類を跳びたい」と言うが、まずは4回転サルコウの成功率を上げて、新プログラムのフリー冒頭に組み込むことを目指しているという。

「頑張って跳ぼうと思った時に、1度目か2度目で跳べるようになってきました。いまは、プログラムの通し練習では3回転サルコウを跳ぶことが多く、練習の最後に、フリーの冒頭だけ曲を入れて跳んでみようかという具合でやっています。これからは(試合に向けて)フリーの曲がけで冒頭に4回転サルコウを跳べるようにやっていこうかなと思っているところです。フリー冒頭には、トリプルアクセルではなく4回転サルコウを入れるので、絶対にシーズン1試合目から安定感を出せたらいいなと思っています」

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