元国際審判員が語る羽生結弦「彼はまだピークを迎えていない」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha  能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 ただ、世界の頂点に上り詰めたとはいえ、年齢的にいっても、むしろ本当の意味での完成はこれからだと思うんです。ブライアン・オーサーコーチとも話をしたことがあるのですが、羽生に関して、「ジャンプの才能をはじめ、ひとつひとつのエレメンツに関しては、何も言うことがないくらい素晴らしい」と言っていました。

 けれども基本的なスケーティング、フットワークなどについては、いろいろな意味で成長する余地がまだたくさんある。

 オーサーは「ベーシックスケーティング」という言い方をしていましたが、僕もそう思います。羽生の場合、まだ完全に大人の身体になりきっていない部分もあるし、そういったことを克服すれば、さらに素晴らしいチャンピオンになれると思います。

 幼い頃、彼はプルシェンコ(ロシア)に憧れたと言っていましたが、タイプ的には違います。プルシェンコは独特のスピーディーでパワフルなスケーティングが持ち味。羽生はもっと柔軟性やナイーブな部分があってそれが魅力になっている。ひとつ前の時代のスターであるプルシェンコを超える選手になれると思っています。

 僕が尊敬しているのは羽生のアグレッシブなところです。精神的に強くて前しか見ていない。実績からいったら彼は現役でトップですよね。そういう選手は守りに入りやすいものですが、彼はたえず前を向いて挑戦者になろうとする。そこが素晴らしいと思うし、だからこそ今後も成長していけると思うんです。

 現時点で世界を見回しても、本当の意味で羽生のライバルと言えるような選手は、今回の世界選手権で優勝したハビエル・フェルナンデス(スペイン)など、数えるほどしかいません。

 そういう意味で2大会連続の五輪金メダルというのは十分に期待できるし、2年後ぐらいに、今以上にいろいろな要素を持った選手に成長している姿を見てみたいと思うんです。
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