「競技人生最高の滑り」。浅田真央がソチで見せた『スマイル』 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 その気持ちが、自己最高得点の演技となって結実したのだ。

 試合後、佐藤コーチからは「よくがんばった。やればできるじゃないか」と言われたという。そして「ちょっと遅かったけどね。でも良かった。最高の演技だった」とも言われたと明るく笑う。

「この4年間、信夫先生もすごく悩んで大変だったと思います。でも最後に自分が目標にしていたプログラムを完成することができたので、素直にお礼を言いたいと思います」

エキシビションでは終始笑顔。観客から大きな拍手がおこったエキシビションでは終始笑顔。観客から大きな拍手がおこった この後、3月下旬の世界選手権まで期間は短いが、できることをひとつひとつやって、SPもフリーもパーフェクトにすることを最大の目標にしていくつもりだ。

「技術的に、信夫先生から学ばなければいけないものがまだまだたくさんあります。でも先生とは今まですごく我慢をしながらやってきたので、これからはスケートを楽しみたいですね」

 こう話す浅田は、これまでの自分の競技人生を振り返り、いろいろなことに挑戦してきた競技生活だったと言う。

「そのなかで五輪も2回経験させてもらいましたが、銀メダルを獲ったバンクーバーはSPは完璧にできて満足したけど、フリーでは満足できませんでした。それで今回は、SPはダメだったけど、フリーでは人生で最高の演技ができました。メダルという結果を残せなかったという悔しい気持ちはあるけど、ふたつの大会を合わせればSPとフリーで満足できる演技ができたということだから......。私の中では最高の五輪だなと思っています」

 浅田は今後の去就については、「まだ決めていない」としか口にしていない。まずは世界選手権。すでにそれを目標にしているからだ。

「その先のことで決まっているのは、アイスショーに出ることだけです。そこではひとりのスケーターとして、見守ってくれた人たちに『ありがとうございます』という言葉を伝える気持ちで滑りたいと思います」

 今後の日本女子フィギュアスケート界の状況を考えれば、まだまだ競技を続けてもらいたいという周囲の期待は大きいだろう。だが、決めるのは彼女自身。じっくり考えて出した決断なら、どんなものでも拍手を送りたい。誰もがそんな思いは持っているだろう。それは日本フィギュアスケート界に記してきた彼女の数々の功績が、強烈な輝きを持っているからにほかならない。

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