【フィギュア】ソチ五輪団体戦出場へ、奇跡のペアが発進 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文text by Synn Yinha
  • photo by Enrico Calderoni/AFLO SPORTS

 一方の木原はシングルスケーターとして活躍していたが、高橋のラブコールなどもあってペアに転向した。高橋と木原は同い年の21歳。ジュニア時代からの"幼なじみ"で仲が良く相性もいい。元気印の高橋を優しくフォローする「気骨のある」木原という関係で、ベストパートナーになっているようだ。小林芳子フィギュア強化部長によると、「(シングルの)木原選手を口説いた高橋選手の熱い思いがあった」からこそ誕生したペアだという。

 そんな2人が過酷な練習の拠点にしたのは米国のデトロイトだ。男子世界チャンピオンのパトリック・チャンら強豪が練習するリンクで、佐藤有香コーチら3人のコーチから徹底指導を受けてきた。特にシングルから転向した木原は、ペアの「いろは」から学ばなければならなかった。女性を持ち上げたり、投げたり、抱き止めたりするには、テクニックを習得するしかなく、さらにペアとしての技を駆使するための上半身の筋力と基礎体力をつける必要があったからだ。

 ペアスケーターを育てるという段階を一段ずつ踏んでいかなければならなかっただけに、4月半ばの時点で佐藤コーチは「まったく先が読めない状況。時間との勝負」と語っていた。

 その3ヵ月後。7月下旬に名古屋で行なわれたアイスショー「The Ice」で、高橋・木原組は初めて人前で今シーズンのプログラムを滑っている。その姿はすっかりペアらしく、スロージャンプもリフトもツイストも堂に入ったものになっていた。ショートプログラム(SP)の「サムソンとデリラ」、フリーの「レ・ミゼラブル」のプログラムも素晴らしく、会場は大きな拍手と歓声に包まれてスタンディング・オベーションがまき起こった。懸命に、健気に演技する2人を見て、涙ぐむ関係者も見られた。

 人に合わせることの難しさがあると言われるペア種目。まして、シングルスケーターでやってきた自分を一度リセットしてペアスケーターの世界に飛び込んだ木原は、並大抵の決断ではなかったはずだ。また、新たなペアで五輪を目指すという高橋には、並々ならぬ覚悟が必要だっただろう。佐藤コーチは「男子のペア選手を育てるには3年かかる」と言っていた。そんな困難な状況の中で、ペアの体裁を整え、競技会に出場するレベルまで仕上げてきたのは"神業"と言えるかもしれない。

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