【ボクシング】井上尚弥 vs.中谷潤人――在米記者4人が注視する「勝敗を分けるポイントとは? スピード、リーチ、経験...... (2ページ目)
ゴンサレス : 重要な要素はいくつか挙げられるが、それを実際にリング上で遂行することは、王者であれ挑戦者であれ、まったく別次元の難しさがある。
33歳の井上にとって、この試合が日本史上でも屈指のビッグイベントであることを、序盤から自分のアドバンテージとして使う必要がある。中谷は、このような大舞台でのプレッシャーに対応できない可能性がある。偉大なフロイド・メイウェザーが常々語ってきたように、「最もスポットライトが当たる場で力を発揮できる選手ばかりではない」からだ。
井上はそれを証明してきたが、中谷はまだ証明していない。だからこそ井上は序盤から仕掛け、中谷がまだ集中しきれていないタイミングを突くことができる。コンビネーションを積極的に出し、強烈な右ボディフックを打ち込むことで中谷を消耗させ、終盤には足を止めさせる展開に持ち込むべきだ。
一方で、中谷は井上より5歳若いという点が、この試合のカギになる可能性がある。試合序盤から流れに乗り、大舞台の雰囲気に飲まれなければ、その後の展開を大きく左右できる。若い脚力を生かして動き回り、距離と角度を作りながらミドルレンジの外でコンビネーションを当てていくことが重要。また、パンチの打ち分けで上下の打点を変えられる点も、この試合では大きなポイントになる。
ヘルナンデス : ポイントはスピードだと思う。中谷は井上が中に入る前に左パンチを当てないといけないが、それは容易ではないだろう。中谷のジャブはレンジを測るタイプで、強く打ち抜く"ピストン型"じゃない。また、スタンスが広く、身体も横向きの構えであるがゆえに、左パンチが相手に届くまでに時間がかかってしまう。
一方で井上はフットワークが軽いから、打たれる前に距離を詰めて中に入れると思う。中に入ったら、井上はコンビネーションがあるから非常に厄介になる。しかも中谷はスタンスが広い分、下がりづらく、バランスを崩される場面も出てくるはずだ。
もちろん中谷にも勝機はある。アミール・カーン(イギリス)のようにキャリア終盤になってアメリカに来るのではなく、早い時期から海外トレーニングしている点は評価できる。井上が経験していないタイプのスパーリングを積んでいる可能性もある。パンチ力があるから、入ってくるところに一発合わせればKOも理論上はあり得る。実際、過去にも一発で流れを変えた試合(アントニオ・ターバー対ロイ・ジョーンズ第2戦、ハシーム・ラフマン対レノックス・ルイス、ジョージ・フォアマン対マイケル・モーラーなど)はある。ただ全体としては、スピード差が大きく、戦術的には井上が有利だと思う。
キンバオ : 井上が中谷に対し、フィジカルの強さと経験を押しつけることができるかどうかが今戦のカギだと思う。中谷は非常に優れた選手だけど、このレベルの試合経験はまだない。あれだけのスポットライトを浴びた経験がどう影響するかはわからないし、今回はこれまでとはまったく違う"光"のなかでの戦いになる。だから経験という点では、井上が明確に優位だと思う。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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