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井上尚弥戦も控える中谷潤人は「KOにこだわるアーティストになりたい」 ティム・ウィザスプーンと過ごしたフィラデルフィアで抱いた決意 (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【スーパーバンタム級のほうが「いい動きができる感覚がある」】

 27歳のバンタム級2冠チャンピオンと、2歳下の弟は16オンスのステーキを、10分足らずでペロリと平らげた。食欲にも食べっぷりにも若さがほとばしる。

ステーキを平らげた中谷。今後は階級を上げるための体作りもステーキを平らげた中谷。今後は階級を上げるための体作りもこの記事に関連する写真を見る

「登りゆく朝日のようなエネルギーだな。見ていて気持ちがいいし、羨ましさを覚えるよ」

 そう言って、ティムは微笑んだ。フィラデルフィアで生まれた元世界ヘビー級チャンピオンより、12歳下の私も同感だった。プロで31連勝中の中谷だが、ここ数試合は自分を出し切っていない。己を搾り尽くさなくても、白星を挙げられるからだ。この伸びしろこそが魅力であり、さらなる成長を見せることは間違いない。

 井上尚弥戦は現在のバンタム級リミットの118パウンド(53.524キロ)より、4パウンド(1.83キロ)重くなる。スーパーバンタム級に上げて4冠王者に挑むには、まず肉体をひと回り大きくしなければならない。

「そうですね。今のところバンタムのリミットを作ることに問題はありませんが、階級を上げたほうがいい動きができる感覚があります。どんな闘いになるか、自分でも楽しみです」

 中谷は決して大言壮語はしないが、自分を信じきれている。それが伝わってきた。

「チャンプは本当にSky is the limit(可能性は無限)だぜ!」

 ティムの言葉に、私と中谷は顔を見合わせた。中谷がWBOフライ級王座に就いていた頃、ある雑誌で彼の記事を書き、私はこの一文で締めくくった。以来、合言葉のようになっていたからだ。

 元世界ヘビー級王者にそう告げると、「ほう、チャンプを象徴するフレーズなのか?」と質してきた。

「今は、Big Bangがニックネームになりました」と返すと、「おぉ、いいじゃないか、宇宙の始まり。爆発的膨張。チャンプの存在が、爆発するってことだな!」と言いながら、また笑った。

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