山中慎介が語るバンタム級の新たな覇権争い 比嘉大吾や那須川天心、「神の左」の後継者も (4ページ目)
【"神の左"の再来 増田陸が見せた一撃KO】
――ミシェル・バンケスを倒した増田選手は、山中さんの異名だった"神の左"の継承者、という見出しもたくさん目にしました。見事なKO劇でしたね。
「切れ味鋭い一撃でした。タイミング、威力、破壊力、すごくいいものを持ってるなと。僕と同じサウスポーですし、戦い方が重なるところもあります。あの左を当てられるのは右の使い方が上手いから。相手のバンケスはサウスポーが苦手ということもあり、増田が左を出したらどんな反応をするのかなと思って見ていたら、最初の一発で終わりましたね。左ストレートだけでなく、右フックも倒せるパンチを持っていますから、非常に楽しみな存在です」
――この日は、2021年世界選手権の金メダリスト、坪井智也選手がバン・タオ・トラン選手に判定勝ち。アジア・パシフィック・バンタム級王座を獲得しました。内容はいかがでしたか?
「すごいボクシングをしていましたね。どの世界チャンピオンでも、坪井とは相当やりにくいと思います。技術は最高峰と言っていいでしょう。KOこそできませんでしたが、あれは相手がタフでした。誰がやってもなかなか倒せなかったと思いますよ」
――試合後に坪井選手は、世界挑戦はひとつ下のスーパーフライ級になると明言していました。
「バンタム級は、本当に詰まり過ぎていますからね(笑)。大渋滞ですよ」
――特にフライ級からスーパーバンタム級まで、軽量級は、日本人が主役を張っている階級と言えますね。
「スーパーバンタム級でいえば、村田昴(現WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王者)にも注目です。ただ、この階級は、井上が4団体を束ねていますからね(笑)。そこに中谷や西田も加わってくる可能性があるとなると、本当にどういうタイミングで誰が抜けていくのか。そして、中量級で世界の壁を誰が超えるのか、いずれも楽しみです」
【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)
1982年滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年第65代日本バンタム級、2011年第29代WBC世界バンタム級の王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。
著者プロフィール
篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)
フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。
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