「チーム200キロ」優宇が語るプロレスデビューまでの苦難 嫌がらせを受けた柔道時代、別の道も断念して辿り着いたリング (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

「きれい事を言って、いい子でいようとする自分がいて。親戚にも『いい子だね』と言われることが多くて、そうしなきゃいけないと思っていました。本当にやりたいことがわからなかったし、"自分"というものがなかった。それがずっとコンプレックスでしたね」

 小学校5年生の時、家の近所でDDTのビアガーデンプロレスが開催され、両親に連れていかれた。乗り気ではなかったが、瞬く間に感情が揺さぶられた。暗い中、スポットライトを浴びて、体ひとつで闘っているプロレスラーが輝いて見えた。

「入場にワクワクしたとかじゃなくて、闘う姿がカッコよかった。こんなに前のめりになることが初めてだったので、心を全部持っていかれた感じです」

 プロレスラーになりたいと思った。将来ではなく、今すぐになりたい。試合後、DDTの高木三四郎社長に「入門させてください!」と言うと、「親の承諾が必要だから」と笑って流された。今思えば"大人のかわし方"だったのだろうが、当時の優宇は「親の承諾があれば入門できる」と解釈した。

 帰宅後、家でカレーを食べながら「私、プロレスラーになる!」と宣言。「三四郎がね、パパとママがOKしてくれたらいいって」と言うと、父は激昂した。「プロレスラーにさせるために、いろんな習い事をやらせたわけじゃない。プロレスはやるもんじゃない。観るもんだ!」――。

 ディズニー映画『リトル・マーメイド』に登場するアリエルに、優宇は感情移入したという。アリエルから「人間の世界に行きたい」と言われたトリトン王が、アリエルが集めていた宝物をすべて壊すシーンがある。優宇の父はトリトン王さながら、優宇が買った『週刊プロレス』を見つけると、破ってゴミ箱に捨てるようになった。優宇も必死になって、机の下に『週プロ』を隠した。

 一方で、初観戦後も観戦を続けたことでDDTの選手と交流を持つようになる。そしてある時、高木三四郎、木村浩一郎、橋本友彦に「プロレスは受け身が大事だから、柔道をやったらどうだ?」と勧められた。「柔道をやればプロレスラーになれる!」と思った優宇は、家から一番近い柔道場を探し、翌日に入門した。

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