110年ぶりの新入幕優勝を果たした尊富士は「人が喜んでくれるから相撲を取る」 いまは恋愛よりも「親や地元の方々への恩返し」 (2ページ目)

  • 飯塚さき●取材・文 text by Iizuka Saki
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

【誰かが喜んでくれるからうれしい】

――青森県出身の関取。先日、地元で優勝凱旋パレードをしました。いかがでしたか。

尊富士 世の中の景気が悪いと言われているなか、自分の優勝が少しでも地域を盛り上げるきっかけになればと、地元の方が企画してくれたイベントでした。皆さんの力がなかったらできなかったと思うし、自分のほうが逆に励まされました。皆さんからの声援も、「おめでとう」よりも「ありがとう」のほうが多かった。お年寄りの方には喜んでいただいてよかったし、子どもたちには相撲に少しでも興味をもってもらえたらいいなと、子どもたちの未来のために今後も頑張ろうと思いました。

――自分のためではなく周囲のために、と常に話される関取。その考えはいつ頃から芽生えてきたんですか。

尊富士 幼少期からずっとですね。自分に対して喜ぶことはないんです。誰かのために頑張って、自分が頑張ったことに対して誰かが喜んでくれるからうれしいという感覚です。自分のために頑張るのって限界があると思うんですね。スポーツだけじゃなくて、勉強でも、親孝行のためにいい学校に入ろうと思えば頑張れる。自分だけのためだったら、そこまで頑張れないのかなと思います。

――ここまで順調な出世街道を歩んでいます。それも日々、周囲のためを思って取り組んだ結果でしょうか。

尊富士 そうですね、日ごろ頑張っていたら何かが返ってくると思って取り組んでいます。結果はあとからついてきますから、ありのままで、やるしかないんです。自分が本来持っているものは、気がつけば土俵上で出ます。日々、どれだけ自分に向き合ったり、相撲について考えたりするか。そのあたりは横綱(照ノ富士)の人間性でもあるので、その背中を追いかけています。横綱を尊敬して、その生き方に憧れてこの部屋に入りましたから。

――横綱に生き方を学びながら、相撲ひと筋で真っすぐここまでこられました。

尊富士 はい、いままで、自分から何かしようとすることってあんまりないんですよ。いまも趣味はなくて、まだ、相撲だけの人生しか歩んできていません。相撲以外に得意なものはないんです。

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