総合格闘家・鈴木千裕は絶対王者になって新時代をつくる 防衛戦と師匠・五味隆典に恩返しする一戦への思い (2ページ目)

  • 大楽聡詞●文・取材 text by Satoshi Dairaku

――4月29日の金原正徳選手とのRIZIN初防衛戦に向けて、鈴木選手は1月末からタイ合宿を敢行しました。強豪揃いと言われるタイガームエタイジムでのトレーニングはいかがでしたか。

「充実した練習環境で、柔道・柔術・レスリング・ボクシング・キックボクシング・ムエタイなどの多くのプロ選手が集まり、全てがひとつの場所で完結する。いろんな相手を自分で選んで練習できるのでよかったですね。

 それと参加者が全員初対面で、相手選手の手の内がわからないから新鮮でした。『この人、打撃がそれほど強くないから、組もう』と思ったら、実はレスリングの国内チャンピオンだったりするんですよ(笑)。打ち合った練習相手がボクシングのロシアチャンピオンだったり、柔道のチャンピオンだったり、予備知識がないまま向かい合うので、面白い。慣れてきたら徐々に相手のキャリアの予測ができるようになって、その判断の練習にもなりましたね」

――鈴木選手は師匠・五味隆典選手とともにKNOCK OUTのリアリティ番組「THE KNOCK OUT FIGHTER」のコーチに選ばれました。そして、2024年6月23日、KNOCK OUTメインカードとして五味選手とボクシング対戦が決まりました。「戦いの中で学びたい。それはレジェンドを超えるために必ず必要だ」と発言しましたね。

「五味さんはキャリア的に、いつ引退してもおかしくない。だから、五味さんと試合できる人はもう限られています。それはたぶん、片手に収まる人数だと思う。次の試合で引退するかもしれないし、数試合後かもしれない。それはわからない。僕の師でもある五味さんに、恩返しをするタイミングが一生ないって考えると、嫌ですよね。だから五味さんが現役で戦える時に戦いたい。

 五味さんは弟子である僕に対してもフルスイングをかましてくるような人。それを公式の場で向き合った時に、『こんなに圧力があるんだな、こんなにパワーがあるんだな』ということを僕は体で学びたいんです。それができるのは日本人でも限られている。だから最後の授業を受けたいです。そして、師匠を越えて恩返しをしなければいけない。五味さんの生きた証を格闘技の歴史として僕が継承します。

 金髪は僕のトレンドマークです。五味さんも金髪だったので、そこは継いでいますし、リングで『天下無双の稲妻ボーイ』も僕が継ぎます。五味さんが格闘技で残してきた歴史は僕が継承していくので、まだまだ消えないですよ。

 僕がこの稲妻ボーイをいつかの誰かに継承した時に、先代の五味さんから僕、僕から誰か、そこからまた次の誰かに、天下無双シリーズが続けば、五味さんの歴史は途絶えることはない。そして、僕の歴史も途絶えることがないんです」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る