「伊調馨二世を育ててもつまらない」。伊調馨がコーチ兼選手として思うこと (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

---- オリンピック階級ではない65キロ級でアジア選手権を制した森川選手の今後について、伊調さんは早めの階級アップを希望しているそうですね。6月の全日本選抜選手権、9月の世界選手権を制したあと、オリンピック代表選考が始まる12月の全日本選手権にはオリンピック階級の68キロ級で挑む青写真だと聞きました。

「65キロ級でもいいから一度は世界チャンピオンになりたい、という気持ちはわかりますが、私としてはできるだけ早く階級を上げてやらせたい。65キロと68キロ、わずか3キロの違いですが、かなり重いですよ。世界のレベルも全然違いますし。最終目標のパリオリンピックまでに間に合うかどうか」

---- 東京オリンピックから次のパリオリンピックまで、3年しかないですからね。

「がんばらないと相当厳しいと思います。そのなかで美和のよさを生かすとしたら、スピードとゾーン際でもつれた時のうまさ。パワーで勝負はできないでしょうから、動き勝つしかありません。

 東京オリンピックでの日本の戦いを見ても、軽量級では層の厚さを世界に見せつけることができました。しかし、重量級は世界に置いていかれています。これは美和本人の努力に託すだけでなく、私やレスリング関係者がみんなで団結し、力を合わせて強化していかなければいけないでしょう」

---- 2024年パリオリンピックで東京オリンピック以上の結果を出すために、日本レスリング協会は伊調さんを「アントラージュ・コーチ」に任命しました。その役割は「アスリートが強化コーチに相談しづらい悩みなど、アントラージュ・コーチを通じて強化委員会に伝えることにより、円滑な強化推進をはかる」とのことです。5月に東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで行なわれた全日本女子チームの合宿に伊調さんも参加されましたが、アントラージュ・コーチとしての感想は?

「私はレスリングという競技が好きで、いろんなものをレスリングで得てきました。そうした経験、技術、知識を後輩たちに教えてほしいとオファーをいただいたので、少しでも力になれるならとお引き受けしました。ただ、私も協会も初めてのことなので、具体的に何をしたらいいのか決まっていないんです。

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