2022.01.02

朝倉海にリベンジした扇久保博正、カズの息子も。大晦日のRIZINは「逆境」「諦めない」男たちが輝きを放った

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

「諦めなくてよかった」

 この言葉に、扇久保博正の16年間の格闘技人生が詰まっている。RIZINのバンタム級トーナメント制覇、リング上での公開プロポーズ&成功、優勝賞金1000万円を手にした扇久保は、大会直後の深夜1時に更新した自身のTwitterで、吉野家の牛丼を食べている写真とともに冒頭の言葉をつぶやいた。

朝倉海(右)を破って、RIZINバンダム級トーナメントを制した扇久保 photo by Sankei Visual朝倉海(右)を破って、RIZINバンダム級トーナメントを制した扇久保 photo by Sankei Visual この記事に関連する写真を見る  準決勝で井上直樹、決勝で朝倉海。優勝候補ふたりを撃破、何度も頂点に手をかけながら、それを逃してきた34歳の扇久保が遂に頂きに立った。大会前、格闘技解説者・大沢ケンジは「扇久保の組みは本当に強い」と評価していたが、得意の組みだけではなく、この日は打撃でも積極的に前に出て打ち勝つシーンが幾度も見られた。

「何回も何回も、『格闘技を辞めよう』と落ち込んだ時もあったんですけど、続けてやってきてよかったです」

 優勝後のマイクでそう語ったとおり、絶対に諦めない根性、勝利への執念で掴んだ優勝と言えるだろう。

「打・投・極・根性」。総合格闘家に必要なすべてを持ち合わせる扇久保だが、「掴み損ねてきたことがたくさんあった」と格闘技人生を語る。修斗では、フライ&バンタムの2階級を制覇。2016年には、UFCの登竜門とされる格闘リアリティ番組『TUF』に参加。普通であれば契約を結べるはずの準優勝を果たしたが、契約には至らなかった。その翌年、日本人史上最年少の19歳でUFCと契約したのが井上直樹だった。

 準決勝の組み合わせ発表の際、会見で扇久保は「僕はあの時から、心の底から『幸せだ』と思ったことはありません」と悲痛な思いを吐露した。「5年前、僕はUFCの切符をつかみかけました。でも、その夢の切符をつかんだのは当時19歳の彼(=井上)でした。このトーナメントが始まってから、僕は井上選手のことしか見えていません。リングの上でやっと会えるのが楽しみです。必ず勝ちます!」と、打倒・井上を口にした。