2021.07.26

阿部一二三と詩、金メダル獲得後に語った思い。「喜びを越えた先の喜びを体感した」

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by JMPA

 この偉業は柔道史に太字で書き込まれることになる。五輪で柔道史上初のきょうだい同日金メダル。23歳の兄、阿部一二三(ひふみ=パーク24)と21歳の妹、阿部詩(うた=日体大)。互いに支え合い、信頼し、切磋琢磨してきたふたりが7月25日、東京五輪の表彰台の頂点にともに立った。

同日に金メダルを獲得した阿部一二三と阿部詩同日に金メダルを獲得した阿部一二三と阿部詩

 日本の柔道の聖地、日本武道館。午後7時半。男子66キロ級決勝。一二三が勝利を決めると、先に金メダルを獲得していた妹が会場の隅で両手を突き上げ、小躍りしながら喜びを爆発させた。詩は言った。

「ホッとした感情と、喜びが交じった感じでした」

 優勝した時の畳の上でのきょうだいの仕草は対照的だった。妹は全身で喜びを爆発させたが、兄は厳しい顔つきを崩さなかった。なぜか。一二三は振り返った。

「あの時は、日本武道館という夢の舞台で金メダルを獲って、胸を張って、畳を下りたいと思ったのです」

 畳から下りると、一二三は一転、古根川実コーチと抱き合い、泣いた。

 直後のテレビインタビューでは開口一番、こう感謝した。

「まず、このような状況で、いろいろな人のお陰があって、オリンピック開催までたどりつけていただいた。そんな、たくさんの思いが、込み上げてきました」

 その約20分後の表彰式。待機場所で兄と妹は抱き合って泣いた。いろんな苦労を思い出しのか。互いに「おめでとう」「ありがとう」と口にしていた。

 表彰式では2度、『君が代』が武道館に流れた。表彰台の頂点に立ったふたりは最高の笑顔を浮かべていた。