阿部一二三時代を確信する戦慄の一本勝ち。18歳で五輪メダリストに圧勝 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Sho Tamura/AFLO SPORT

 続いて阿部の袖釣り込み腰に、主審は一度「技有」を宣告して試合を終えようとするも、ジュリーの判断で「有効」に。攻め手を緩めない阿部が最後は得意とする背負い投げから体落としへ移行し、海老沼の背を畳につけて「一本」。勝負ありとなった。

 手の内にある技を余すことなく繰り出し、完膚なきまでに王者を叩きのめした完勝だった。海老沼は2014年のグランドスラム東京でも当時高校2年生だった阿部に敗れており、相性の悪さもあるのかもしれない。しかし、相手を豪快に投げ放つ柔道の申し子のように覚醒した阿部に完全に屈した形となった。

 この大会は、数カ月後に迫っていたリオ五輪代表の最終選考会を兼ねていた。大会後、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論がかわされ、代表には2013年と2014年に世界王者となった実績などから海老沼が選ばれた。

 阿部の将来性は柔道関係者の誰もが認めるところだったが、前年の講道館杯で3位になった時点で、リオへの道はほぼ閉ざされていたのである。

 阿部一二三の名がブレイクしたのは、2014年11月の講道館杯だった。初めてシニアでの試合ながら優勝。続くグランドスラム(東京)も史上最年少で優勝した。

 のちに、阿部は講道館杯優勝から始まった代表争いをこう振り返っている。

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