あのレスリング女王が衝撃の惨敗。伊調馨は「早く負けろ」と言っていた (5ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 だが、攻めきれていない。それが最大の持ち味なのに。本人は意識していないどころか、むしろ『攻めなきゃ、攻めなきゃ......』と自分に言い聞かせているでしょうが。

 私自身の経験から言えば、早く負けることです。若いうちに。チャンピオンの肩書もプライドも捨てて、ガムシャラにやったほうがいい」

 2003年、世界チャンピオンの伊調はライバルのサラ・マクマン(アメリカ)に国際大会で敗れた。さらに2016年、オリンピックイヤーのときも国際大会で0-10の完敗を喫した。

 連勝記録が途切れた伊調は、そのたびにこう言った。

「負けないとわからないことがある。この負けはチャンス。成長のキッカケにします。ドーンと落ちて、また上がっていくほうが突き抜けられる」

 この言葉は、まさしく連勝が63で途切れた須崎のためにあると言っていい。

 一方、須崎に勝った入江は決勝戦で五十嵐未帆(至学館大)を破り、自身2度目の全日本王者となった。コーチや仲間から「研究家」と評されている入江だけに、今大会はかなり須崎のことを研究してきたかと思いきや、彼女は「徹底的に基本を繰り返してきた」と言う。

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