長谷川穂積、引退から3ヵ月後の心境。「現役じゃないけど一生ボクサー」 (4ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 大村克巳●撮影 photo by Ohmura Katsumi

「それでも勝てると思っていたんですけどね」

 敗戦後、「どういう終わり方を、俺は望んでいるのか?」と自身に問うと、答えが見つかる。

「このままでは終われない。もう1回だけ世界チャンピオンになって辞めよう。もう一度、ベルトを獲って終わることが、一番幸せじゃないか」

 この日から、長谷川穂積の第2章とも呼ぶべき、第1章以上に長く険しい闘いの日々が始まる。

 簡単に世界戦は決まらなかった。トレーニングをしながら、ただ待つしかない長谷川は、「あと、どれくらいがんばれる?」と自問する日々を過ごした。当時、「今年(2014年)の春くらいに決まらなければ、それも運命。あきらめて引退するつもりだった」と語っている。まさにタイムリミットぎりぎりの2014年4月、キコ・マルチネス(スペイン)とのIBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチが決まった。

 しかし、3年ものあいだ待ち望んだはずの世界戦にもかかわらず、リングに上がった瞬間、「試合は終わっていた」と長谷川は明かした。

「早く世界戦がしたい。そう思い続けても全然決まらなかった。それがやっと実現した。『よかった、やっと決まった』とうれしくて。リングに上がった瞬間、気持ちが切れたんです。試合が決まったことで、どこか集中の糸が切れてしまった。試合中、すごい無気力で。『しまった』と思っても、もうどうにもならない。『違うだろ、試合が決まって喜ぶんじゃない。勝って喜ばなきゃ』って、試合中に考えてました」

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