長谷川穂積、引退から3ヵ月後の心境。「現役じゃないけど一生ボクサー」 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 大村克巳●撮影 photo by Ohmura Katsumi

 長谷川は2011年4月8日、ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)に敗れてWBC世界フェザー級王座から陥落した日に、「いつか現役生活には終わりが来る」と悟ったという。

「それまでは、ほんまに永遠にボクシングをやるんやろうなって思ってました。頭では、いつかは引退する日が来ることを理解していても、心では、『いうてもやり続けるやろ』と。ただ、負けるはずがないと思っていたジョニー・ゴンサレスに負け、『いつか現役生活に終わりは来るんだ』と皮膚感覚で実感できた。だから、必死に考えたんです。どういう終わり方を、俺は望んでいるのか?」

 時計の針を、もう少しだけ戻したい。

 2010年4月、長谷川はフェルナンド・モンティエル(メキシコ)に敗れ、10度防衛したWBC世界バンタム級のベルトを失っている。同年11月26日にWBC世界フェザー級王座決定戦、ファン・カルロス・ブルゴス(メキシコ)との一戦が決まるも、試合のわずか1ヵ月前に長年闘病生活を送っていた母が、この世を去った。

「ブルゴス戦は、この試合だけは母のために闘いました。だから、絶対に負けられなかった。もし負けたら、俺は死のうと覚悟してました」

 結果、長谷川はブルゴスを破り、飛び級での2階級制覇を達成する。しかし、前述した4ヵ月後のゴンサレスとの初防衛戦で、あっさりと敗れる――。

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