長いトンネルを抜けたベテランたち。柔道ニッポンへ復活の兆し (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 こう話す浅見の決意が固まったのは、今年の2月に行なわれたGPデュッセルドルフ大会()で3位に終わった後だったという。悔しさが表情に出ていなかったのか、谷本歩実コーチから「昔は負けた時そんな顔をしてなかったよ」と声をかけられたことだった。
※グランプリ/国際柔道連盟主催大会。出場資格は過去2年間にW杯に出場しているか、ジュニアまたはシニアの世界選手権か、大陸選手権に出場していることが条件になっている。

「自分がドイツで負けたのは、勝った選手の方が必死さで私を上回っていたからだと思いました。ケガから復帰したあと、前とは違う方向で新しいものを見ていくべきか、昔の自分を取り戻そうとすべきか迷っていました。でも大会のあとで谷本コーチと相談して、まずは五輪に出たくて必死にやっていたロンドン前の気持ちを取り戻し、その上に新しい自分をプラスしていけばいいのではないかと言われて......。世界にはすごい選手もいるけど、日本柔道は一番じゃなきゃいけないと思うし。必死にやった結果なら、違う色のメダルでも美しいと感じるかもしれないけど、やっぱり一番になることを目指したいと思いました」

 そんな必死さが、最初に指導を取られて劣勢になったことで発揮された。全日本柔道連盟の南条充寿女子監督は「1回戦では硬さも見られたが、決勝では『2度と同じ失敗をしないぞ』という気持ちで世界チャンピオンらしい戦いをした。指導を取られたあとでも気持ちが切れず、勝負の流れを変える強さを身につけたかなと思うし、強い浅見が帰って来たと思う」と評価する。

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