2013.12.05

漫画家・猿渡哲也が選ぶ、新日本プロレス名勝負ベスト3

  • “Show”大谷泰顕●文 text by “Show”Otani Yasuaki

今、プロレスが熱い! 中でも1972年にアントニオ猪木が旗揚げした老舗団体・新日本プロレスは全国の会場を満員のファンで埋め、新黄金時代を築こうとしている。一時期は総合格闘技ブームに押され停滞していたプロレスに、かつてのファンが戻ってきている。長年にわたり格闘技を題材にした作品を多く描いてきた漫画家・猿渡哲也もそのひとりだ。猿渡氏に、記憶に焼きつく新日本プロレスの名勝負ベスト3を聞いた。

「タイガーマスクは、
漫画を現実で体現していた」

さるわたり・てつや 1958年生まれ、福岡県出身。『海の戦士』(『週刊少年ジャンプ』)で漫画家デビュー。代表作は『力王』『ドッグソルジャー』『高校鉄拳伝タフ』『TOUGH』など多数。現在、『グランドジャンプ』で連載中の『ロックアップ』単行本第1巻が絶賛発売中! 若林広称●写真 photo by Wakabayashi Hiroya――猿渡先生はいつ頃からプロレスを観始めたんですか?

猿渡 幼い頃から観ていましたけど、当時、ウチの田舎(福岡県)では国際プロレスしか放送(TBS系列)してなかったんですよ。新日本と全日本に関しては噂で聞くくらいで。それこそ、『ジャイアント台風(タイフーン)』(講談社)っていう漫画を読んで「ジャイアント馬場はすごい!」って妄想を膨らましてたの。で、後に全日本も放送されるようになって初めて動く馬場さんを見たとき、「え、こんな年とってたんだ」ってガッカリした覚えがあるね(苦笑)。その頃には新日本の放送も始まって、当たり前のように観ていましたよ。

――それ以来、ずっとプロレスファン?

猿渡 いや、思春期の頃にプロレスから離れた時期もありました。「これはどうせショーなんだ」っていう、思春期ならではのひねくれた感じでね(笑)。でも、その後1981年だったかな、平松伸二先生のアシスタントになったのがきっかけでプロレス熱が復活したんです。平松先生がプロレスを題材にした作品を描いていたんですよ。

――『リッキー台風』(集英社)でしたね。

猿渡 そう。だから、否が応にも仕事としてプロレスを観ることになって、またファンとして目覚めたんです。

――第2期プロレスブームが来たわけですね。

猿渡 それまでは、一度熱が冷めてしまったものを再度好きになるなんて、自分の人生ではあり得なかった。それなのに、その時はガッツリとプロレスにハマったんです。

――ハマッたきっかけは何だったんですか?

猿渡 タイガーマスクのデビュー戦ですね(vsダイナマイト・キッド 1981年4月23日、蔵前国技館)。これをベストバウトの1位に選びます。最初は「これはショーだ」ってうがった目で観ていたけど、タイガーの動きの素早さだったり、試合の展開だったり……まさに漫画を現実の世界で体現していましたよね。僕が東京に出てきたタイミングだったし、思い入れがあります。確かデビュー戦では、リングインの際にコーナーポストに立って天に指を突き刺すポーズはしてなかったんじゃないかな。ダイナマイト•キッドとの一連の試合は、あそこまでエンターテインメントとして観客を沸かせるのはすごいと思いましたよ。

――エンターテインメントとして観たわけですね。

猿渡 個人的な意見だけど、いわゆる「シュートが強い」と言われている選手の試合って、あまり面白くないんだよね。それよりもタイガーだったり、今だったら棚橋弘至選手のような、華やかさで魅せる選手のほうが僕は好きですね。最近、よく会場に観に行ってますけど、今の新日本は本当に面白いですよ。

――最近の新日本は第1試合からメインまで、選手のキャラがそれぞれ際立っていますよね。

猿渡 そう、「ストロングスタイル」からの脱却というか、エンターテインメントに徹している部分があってすごく楽しく観られますね。もちろん、レスラーの肉体や技に説得力がなきゃいけないけど、それより観客を飽きさせないこと。そこが、格闘技にはないプロレスのすごさだと思う。