【柔道】日本柔道、ロンドン五輪『惨敗』の真相
100kg超級出場の上川大樹が2回戦で敗れ、男子柔道は五輪で初めて金メダルなしという結果に終わった ロンドン五輪で、金メダルが松本薫(女子57キロ級)の1個にとどまり、男子は史上初めて金メダル「ゼロ」という惨敗を喫した日本柔道。柔道の母国としての威信を失った最大の要因は、強化体制の不備および世界の柔道への対策が不徹底だった点に尽きるだろう。
北京五輪後、男子の監督には篠原信一氏が、女子の監督には園田隆二氏が就任した。それまでの代表コーチ陣は、ふたつないしひとつの階級を担当する形をとっていたが、ふたりの監督就任を機に担当制を廃止し、コーチの数も5人から3人に減らした。
北京以前は、担当コーチと選手は二人三脚で該当階級の海外選手を研究し、対策を練っていた。ところが現体制ではコーチ陣が全階級を担当するため、個別の対策がどうしても不十分となってしまう。また、ひたすら走り込みと、乱取りの数をこなすような合宿に、選手から不満が噴出していた。
今年だけで男子は11回も合宿を行ない、オーバーワークによってケガをする選手が続出。ケガを理由に合宿や国際大会を「欠場」しようものなら、首脳陣は「もう代表には選ばない」とまるで脅しのような文句を投げかけた。
海老沼匡(男子66キロ級)や福見友子(女子48キロ級)、中村美里(女子52キロ級)といった世界ランク上位者が軒並み敗れたのは、明らかに勤続疲労によってピーキングの失敗からだった。
確かに、08年から世界ランキング制度が導入され、22位までに入っていなければ五輪の出場資格はない。だが裏を返せば、22位以内にさえ入っていれば五輪出場権は確保できるのだ。選手に無理を強いてまで世界ランク1位を目指す必要はなかった。特定の選手だけを派遣しポイントを獲得させるのではなく、できるだけ多くの選手を派遣し、全体の底上げを図るべきではなかったか。
大会最終日、敗因を問われた男子監督の篠原氏は、選手の「精神面の弱さ」を挙げた。
「外国勢はメダルを獲りたいという意欲がすごい。もっとメンタル的なところをしっかり強化すべきだった」
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