【ボクシング】無敗の挑戦者ブラッドリーに、最強王者パッキャオがついにマットに沈む!?
昨年11月のマルケス戦でも苦戦したマニー・パッキャオ 6階級制覇の世界チャンピオンにしてフィリピンの国会議員でもあるスーパースター、マニー・パッキャオが6月9日(日本時間10日)、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナで、現在保持するWBO世界ウェルター級タイトル4度目の防衛戦に臨む。破壊力抜群の強打と破格のスピードを武器に、数々のミラクルを成し遂げてきたスーパーマンも、今年で33歳――。WBO世界スーパーライト級王者ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)を相手に、今回も有利の声が大勢を占めてはいるものの、一方で厳しい試合になるのではないかという見方も少なくない。
この10年間のパッキャオの活躍は、120年を超える近代ボクシングの歴史のなかでも特異なものとして記憶されるはずだ。なにしろ、公平さを保つためという大義のもと、体重別に17の階級に細分化されているボクシングで、フィリピン生まれのサウスポーは6つの階級を制覇してしまったのだから。この偉業を達成した先人は、オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)ただひとり。しかも、デラ・ホーヤの6階級制覇が約13キロの間で成し遂げられたのに対し、パッキャオのそれは約19キロの幅をもって達成されており、その点で一段と高い価値を見出すことができる。
それだけではない。2006年以降、パッキャオは14連勝(7KO)を収めているが、その相手全員が現役の世界王者か、元あるいは後の世界王者なのである。デラ・ホーヤのほか、4階級制覇のエリック・モラレス(メキシコ)、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)、3階級制覇のマルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)、ミゲール・コット(プエルトリコ)、シェーン・モズリー(アメリカ)ら錚々(そうそう)たるメンバーを下してきたのだ。首尾よく計画的につくられたものではなく、実力で勝ち得た記録であることが分かる。
しかし、この2年は4試合続けてKO勝ちから遠ざかっている。相手がいずれ劣らぬ実力者であることを考えれば仕方ないのかもしれないが、以前のような華々しさ、躍動感に陰りが見えるのも事実だ。6階級制覇を成し遂げた2010年11月のアントニオ・マルガリート(メキシコ)戦では、ボディを攻められて動きが止まる場面も見られ、次のモズリー戦ではスリップながらダウンも喫している。昨年11月のマルケスとの3度目の対決は、相手のカウンター戦法に手こずり、思い切った踏み込みができないまま終わった。なんとかふたりのジャッジの支持を取り付けて判定勝ちを収めたものの、マルケスの勝利を推す声のほうが多く、後味の悪さが残ることになった。
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