【男子バレー】髙橋藍が見せた勝負師の本性 アジア選手権優勝へ「苦しむ展開もあると準備している」 (3ページ目)
髙橋が髙橋たる所以は、繰り返しになるが、その勝負哲学にある。敵の癖を見抜き、自分のプレーを最大化できる。そしてそこに驕りがない。リスクマネジメントが重要だというが、失敗までイメージした戦いは、他の選手がやると単に慎重になりすぎて受け身に立ってしまいがちだ。しかし、彼の場合は精強に戦えるのだ。
「アジア選手権は集中してやれていると思いますけど......どこかで崩れる、苦しむ展開も必ず来ると準備しています。そこに備えて、どうスマートに戦っていくのか。いい時はいいですけど、相手が対策していた時に苦しい状況になることもあるし、そこを打開できるか」
髙橋は言うが、勝負師の本性が出たのがオーストラリア戦後だった。ミドルブロッカーのクイックが外れたが、本来は決められるはずのボールで、「たたみかけないといけない場面だったので、もったいない」と、あえて指摘した。一気に相手の息の根を止めるチャンスだったが、その機会を失った。結局はオーストラリアの拙攻に助けられたが、流れを失うと一転、危機に瀕するのがバレーボールの掟なのだ。
「自分も含めてみんなが危機感を持つのが大事で、次は負けたら後がない。ロスへの切符の獲得もそうですが、オリンピックでメダルを取るところまで求めていかないと。組み立て方、たたみかけるポイント......全員でギアを入れられるように」
11日の決勝トーナメント準々決勝のインド戦に向け、髙橋は容赦しない。緊張や重圧は覇気や野望に変換され、相手の心をへし折る。それはおとぎ話の英雄か、漫画のヒーローの肖像だ。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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