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【男子バレー】セッター大宅真樹はチームを勝たせるために我を抑える 髙橋藍にも「本当に好きなボールを要求してほしい」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【髙橋藍とのコンビの精度がアップ】

 昨シーズンのSVリーグ、大宅は髙橋とコンビネーションを深めてきた。その切磋琢磨が、代表でも実を結びつつある。運も実力になるほどに、だ。

「シーズン序盤は2人とも、遠慮していたわけではないですけど、"少々悪くても決まればOK"で終わらせてしまっていて。『自分がなんとかするから』っていうのが(髙橋)藍のスタンスですし。

 ただ、自分はチームとしてもっとうまく回せるようにしたかったし、勝ちたいから、『本当に好きなボールを要求してほしい』って伝えました。それから、だんだんと『この時はもうちょっとこういうトスを』と言ってくれるようになりました。コンビが合わなかった時期が、今は自分たちのためになっていると思います。おかげで、土壇場でも積極的に速いパイプを使えるし、ハイセットでも任せられるので」

 昨年12月、天皇杯で2人のコンビネーションの精度は格段に上がった。髙橋も同じことを話している。ただ、大宅のほうが、優勝よりもその過程に目が向いていた。

「天皇杯から変わりました。大会を通じて、徐々にコンビがよくなる感覚があったんです。自分のなかでは、1試合目から決勝までで、藍とのコンビの精度はすごく上がっていきました」

 大宅は柔らかい声で言った。セッターは実直にトスに向き合うしかない。それは地道な作業だろう。

 結局のところ、3枚ブロックが来ても点が決まったらOKで、1枚で打たせても決まらなかったら批判を受ける。それがセッターの因果で、丁寧に作り上げても思うようにはいかない。だからといって、少しでも手を抜けば報いを受ける。プロセスに没頭するしかないのだ。

「セッターは考えることが多すぎて、考えすぎるとマイナスに働くこともある。でも、考えないのをやめないからこそ、いい方向に向くこともあって......メンタルも影響します。メンタルがいい状態の時に考え続けると、いろんな発想が出て、『今日は楽しい。できそう!』ってなるんですが、メンタルがよくない状態で『やばい、考えすぎてる』ってなると、初歩的なプレーもできなくなるんです」

 答えをこじらせるほどに、考え抜く。それがセッターの本分だろう。彼自身、自らをそう律しているように映った。

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