パリオリンピック男子バレー 石川祐希を「ひとりにしてはいけない」窮地で見せたチームの修正力 (3ページ目)

  • 市川忍●文 text by Ichiawa Shinobu

 もともと関田の一番の長所は、バックアタックを含めたセンターラインの攻撃を効果的に使えるテクニックだと筆者は思っている。ミスが即失点につながりやすいため、クイックへのトスを"置きに行く"セッターが多いなか、アタッカーの高い打点を生かし、なおかつスピードのあるトスを上げることができるところが持ち味だ。

 しかしVNLの終盤から石川にトスが集まる場面が増え、それが決まらずに失点するシーンが目立った。チームの戦略であれば仕方ないが、できれば全員の打数に偏りがなく、それぞれの決定率が上がるのが戦い方としては理想的である。

 アルゼンチン戦ではミドルブロッカーの小野寺太志がチーム2位となる11得点を記録。同じくミドルブロッカーの山内晶大もスパイクはもちろん、数字には残らないがブロックタッチを重ねる守備が光った。両名の活躍もあって、東京五輪3位のアルゼンチンに3-1で勝利し、3戦目のアメリカ戦に望みをつなげたことが予選突破につながった。

【石川を「ひとりにしてはいけない」】

 準々決勝は8月5日。相手は2016年のリオ五輪で銀メダル、2022年の世界選手権を制したイタリアだ。石川の復調具合が、日本の勝敗を左右するのは確かである。

 誰かが不調のときには、ほかの誰かが助けるのがチームスポーツの醍醐味だ。実際に、VNLでは故障でベンチを外れた髙橋藍に代わり、試合に出場した大塚が自信を深め、今大会アメリカ戦での活躍につながった。

 初戦でドイツに敗れたあと、コートインタビューで西田有志は「石川選手をひとりにしてはいけない」と語ったが、"石川を孤立させるな"という意味だけではなく、"石川ひとりに勝敗を背負わせてはいけない"という意味も含んでいたのではないか。その後、2試合の西田の鬼気迫る活躍には「自分もその一端を引き受ける」という強い覚悟が見えた。

 石川が日本チームの中心的存在で、絶対的なエースであることは間違いない。19歳で代表入りして以来、時にはひとりで多くの重荷を背負って戦ってきた。それを少しずつ、周囲の選手に渡し、身軽になって準々決勝に臨んでほしい。

 勝敗以上に、石川が本来のプレーを取り戻すことを多くの人が望んでいる。

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