石川真佑は敵将も認める「日本の宝」。
低身長を補う対応力がすごい (2ページ目)
先発した次戦の韓国戦では、攻守での非凡さを見せた。8月のアジア選手権で対戦していたこともあり、韓国のエースである金軟景(キム・ヨンギョン)は「(石川の)特徴を把握していた」という。確かに、ブロックにかかったり、レシーブに上げられたりすることは、ロシア戦よりも多くなった。
しかし、思わずうなったシーンがある。第1セットの15-17での場面。金軟景がインナー(アタックライン付近)に打ち込んだ強打を、石川が上げた。そして、すぐに大きく開いて助走を開始。切り返しの攻撃で上がってきたトスを金軟景に力強く打ち込み、レシーブをはじいて得点した。
同様のプレーが1度だけでなく何度もあった。守備から攻撃への切り替えの速さ。そして、十分な助走を確保することで力強く打ち込むことができるスパイク。石川の非凡な点は、まさにここである。第4セットの20-24という相手のマッチポイントで回ってきたサーブでは、強気に攻めてデュースに持ち込む足がかりを作り、精神的なタフさも光った。試合はセットカウント1-3で敗れたが、チーム最多の17得点を挙げて気を吐いた。
ひとつひとつのプレーの完成度が高いだけでなく、突出しているのは相手への対応力だ。中田久美監督は「高いブロックに対しての打ち分け方が非常にうまい」と石川を評する。ただ、本人に言わせれば、高いブロックを相手にするのはもともと得意ではなかったという。世界ジュニア選手権で、ロシアやイタリアなど海外勢の高くそびえるブロックに対峙し続けたことで、身につけた能力なのだ。
石川は言う。
「最初は何本も止められていた。どうやって点数を取ろうかと迷いもあった。でも、試合を重ねていくごとに、高いブロックの指先だったり、相手の脇を狙ったりというのを意識していました」
第4戦のカメルーンには勝利したものの、中国戦はセットカウント0-3で惨敗。世界トップの相手は「自分が思っていたよりも、まだ高いブロックだった」と振り返る。途中出場した第2セットで、初めて放ったスパイクはブロックに阻まれた。
だが、ここで終わらないのが石川の対応力だ。「1本目を打った時より、少し高い位置で捉えるようにして、もう少し上のほうを狙って打っていました」と涼しい顔で言う。1本目のスパイクで感覚をつかんで即座に対応。直後に打った2本目は指先に当ててコート後方にはじき飛ばした。第2セット終盤からの出場だったにもかかわらず、巧みにブロックをはじくなどして奪ったスパイク得点はチーム最多に並ぶ7点。前回女王、リオ五輪覇者にもっとも手を焼かせた。
底知れぬ可能性を秘める19歳。苦境の日本を救うのは、この選手かもしれない。
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