【バレー】90年代のカリスマ「ガイチ」は沈む全日本を立て直せるか (4ページ目)

  • 中西美雁●文・写真 text & photo by Nakanishi Mikari

 チームの方向性は会見でも多少語られた。

 自分自身は大エースだったが、今後の全日本男子を「エース頼み」のチームに育てるつもりはあまりないという。中垣内と同じポジションのオポジット・清水邦広の後継者を探しつつ、「オポジットを攻撃専門ということにこだわらないシステムも考えている」とのこと。昨年のワールドカップを見て「石川祐希・柳田将洋と得点力のあるサイドアタッカーがやっと出てきた。これならオポジットに頼り切らなくてもいい」と思ったそうだ。

 当面の選考は前任の南部正司監督の選出したメンバー、とりわけ石川を中心にして考える。戦術的には「サーブとブロックの強化が急務」。それを実現するために、実績のある外国人コーチを招く予定だ。これは、ある意味3年間のブランクがある自分の指導力や分析力を冷静に認識した上での行動といえるだろう。中垣内自身は渡米前から英語に堪能で、通訳なしでコミュニケーションは取れるはずだ。

 このように経緯を追っていくと、正直、この人選がベストだったかといえば疑問は残る。サッカーなど他競技同様、実績のある外国人監督を招聘する手はなかったか。ただ、コストやコミュニケーションの面で日本人監督に絞るならば、最善とはいえなくても、悪手でもないと思う。

「自分は全日本で育ててもらったので恩返しのつもりでお受けした。この就任を一番に伝えたいのは、亡くなった筑波大の恩師、都澤凡夫(ただお)先生。長所を褒めて伸ばす指導で、私を我慢強く使い続けてくれた。目標は突飛と思われるかもしれませんが、東京五輪に挑戦する以上はメダルを獲りたい」

 地元開催の五輪での活躍がなければ、それ以降の競技人口・人気にも大いに影響がある。かつてのカリスマ大エースは、低迷する全日本男子を立て直せるか。心配は少なくないが、まずは期待を持って、その指導力を見ていきたい。

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