【男子バレー】全日本監督交代の舞台裏。新監督は未来を切り開けるか (3ページ目)
ゲーリー監督の評価基準の一つに、今年ポーランドで行なわれる世界選手権での成績があったが、出場それ自体がかなわなかったことが、解任の判断の大きな要素となった。また、東京五輪決定で、「是が非でもよい成績を出さなければならないという目標ができたから」と桑田GMはコメントした。東京五輪決定がなければ、解任はなかったのかという質問には「お答えすることができません」と答えた。
ゲーリー前監督の任命責任については、羽牟会長は「任命責任はあると思っています。しかし、彼を任命したことで、選手達が自ら考えることを始め、30年以上滞ってきた日本バレー界に新しい血を入れることができた。それは大きな収穫だったと考えています」と語っている。
南部新監督が最も重視しているのはレシーブだという。ただし、守るだけでは勝てないので、「攻防一体」で守りつつ攻めるのが理想だとのこと。今年度の全日本メンバーで来年度も残るのは「50%くらい」。残すのは主にサイドアタッカーで、ミドルブロッカーについては大幅に変えることを考えている。セッターとリベロについても変える可能性がある。東京五輪のことを考えて、「若手を積極的に登用したい」と語り、具体的に雄物川高校の2メートル1センチのサイドアタッカー鈴木祐貴や、春高連覇の原動力となった星城高校の石川祐希の名前を挙げた。
ゲーリー前監督が導入した、従来の日本の常識と異なる戦術について、どう評価しているか。南部監督は「私の口からは言えない」と答えたが、重ねてそれを引き継ぐかどうかに関して問うと、「私もゲーリーさんから直接聞いたわけではなく、帰ってきた選手から聞いたことばかりです。たとえばサーブレシーブを体の外側でとるという方式。それについてうちのダンチ選手(ブラジル代表でアテネでは金メダル、北京・ロンドンでは銀メダルを獲得)に聞いてみたところ、『それは正しい』と。ただ、スピードの速いサーブに関しては、ということらしいんですよね。だから、情報を精査して、受け継ぐところは受け継いでいきたい」という回答だった。
パナソニックは全日本の主力選手を多く抱えていた(ロンドン五輪予選の時点で、宇佐美大輔、山本隆弘、清水邦広、福澤達哉、永野健の5名)ビッグクラブだが、南部監督は全日本メンバーが五輪予選でごっそり抜けた黒鷲旗大会で2度、チームを優勝させている。ナショナルチームは、国内のリーグのように、国内の有力な選手を多く集めて、いい助っ人外国人選手をとれれば勝てるというわけにはいかない。主力選手を多く欠く中で堅実に優勝旗を獲得できたその手腕に、全日本男子の立て直しがかかっている。
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