錦織圭のアドバイスは「今までの打ち方でいい」 土居美咲は「お墨つき」をもらって迷いも吹っきれた (3ページ目)
【圭くんがいて、本当にうれしかった】
そんな時の錦織は、力強く何かを断言したり、わかりやすい助言をするわけではないという。力強さは時に押しつけになり、わかりやすさは紋切型に陥りかねない。代わりに錦織がしてくれたのは、「耳を傾けること」と「共感」だった。
「私の話を聞いて、『そうそう、やっぱりそうだよね』みたいに言ってくれたり。ずばり『こうすればいい!』みたいに言うのではなく、ただ『1週目と2週目で、トップ選手は徐々にギアを上げているよね』とか、『たしかに僕も、最初はすごく疲れてたかも』みたいな感じで。話を聞きつつ、共感してくれました」
錦織圭ですら、かつては自分と同じような経験をしたと知るだけで、どれだけの安心が得られたことか。
「本当は圭くんと話した経験を、生かせる場があればよかったんですけどね......」
土居さんはそう言って、少し気恥ずかしそうに笑った。
2016年にキャリア最高位の30位に至った土居さんは、その後、300位台まで落ちる苦境も経て、再びグランドスラムの舞台へとカムバックした。2020年東京オリンピックにも、日本代表としてシングルスに出場。ただ、キャリア終盤は腰椎分離症に悩まされ、32歳で現役生活に終止符を打った。
戦いの舞台を広げる過程で直面する事象は、当事者にとってはすべてが初めての経験。ただ、同じ道を踏破した先達がいれば、未知への恐れは薄まるだろう。
「悔いなく走りきった」と明言する15年間のプロキャリアを振り返り、土居さんは表情に光を灯して言った。
「テニスはもちろん個人戦ですが、同じ日本人だとチーム的な感覚もある。経験した人にしかわからないことも多いなかで、いろんなことを質問できる距離感に圭くんがいて、本当にうれしかったなと思います」──と。
(つづく)
◆土居美咲の視点(3)>>「一番好きな選手。ずっとずっと応援しています」
【profile】
土居美咲(どい・みさき)
1991年4月29日生まれ、千葉県大網白里市出身。6歳からテニスを始め、2008年12月に17歳8カ月でプロ転向を表明。2015年10月のBGLルクセンブルク・オープンでWTAツアーシングルス初優勝を果たす。2016年のウインブルドンでは初のグランドスラム4回戦進出。オリンピックには2016年リオと2021年東京の2大会に出場。2023年8月に現役引退を発表。WTAランキング最高30位。身長159cm。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
【写真】日本女子テニス「6人のティーンエイジャー」フォトギャラリー
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